短い話 | ナノ
もっと、もっともっと速く…!喉が焼けるように熱くて、酸素が足りなくて頭は痛いし、足もバラバラになるんじゃないか。そう思ってしまうほど、私は速く走っていた。風を受けて、それでも前へ前へと足を出す。彼らから逃げれたかと後ろを振り向けば、私を追いかけていた人達の誰一人として見当たらない。やっぱり私に敵う人はいないんだ。
ふう、と足を止めようとした時、ドサリと誰かにぶつかってしまった。すみません、と急いで謝るために顔を上げると、ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべたネコ目のフードを被った人が私の体を支えてくれていた。

「危ないよ?って、あれ、怪我してるね」
「えっ、あ、大丈夫です。すぐ治るんで」
「まぁまぁ、いいからおいで」

え?腕を引っ張る彼に、混乱ばかりが生まれる。信じていいのか、とすら思うけども、こんな優しそうな人なら大丈夫だとも思えた。そのまま彼に引っ張られていると、彼は自己紹介をした。名前は、カノさんだと。どうやら私とあまり歳が変わらない、と。私の名前を聞いてきたので、自分も名前を言えば振り返ってにこりと笑った。そうして着いた場所は、人気のない場所で扉を開けて入っていくカノさんに続いて私も入る。

「おい、カノ遅い……誰だ」
「ん〜?メカクシ団に入団希望者!」
「え?あ、あの?」
「ほら、さっき説明したでしょ?影の薄い子!」
「あ、ああ!メカクシ団!」

部屋の中には中性的な人と、ふわふわの真っ白なキレイな髪をした女の子と、体つきがしっかりとしている爽やかな男性と、有名新人アイドル如月モモちゃんと、携帯と何やら喧嘩をしている男性。私が、さっき話してたのがメカクシ団ですか、と間延びした声で言えば、カノさん以外の人たちはぎょっとした顔をした。あ、あれ…、なんだろうこの感じ。

「ほら、キド。名前ちゃんは全部知っちゃったから、帰せないねぇ」
「…そうだな、知った以上は」
「え?あの、状況が読めないんですけど…」
「カノさん!また無実な人を引き込んで…!でも、仕方ない、ですね…」
「いや、あの、状況説明を…」

「ようこそ、メカクシ団へ!」

ようこそ、なんて…。喜べないんですけど!何ですか、この怪しい雰囲気は…!足を踏みかえて扉に手を伸ばそうとすると、遠い所にいたはずの中性的な人が私の手を掴んだ。ど、どういうこと?!セトと呼ばれた爽やかな笑顔を見せている人は、簡単に私を抱き上げて奥の方へと連れて行く。

流されてくださいお願いします

(え、ちょ、離してくださいよ!)(お、この子力強いすよ)(だってこの子も能力者だしね〜)(どんな能力なんですか?)(まぁまぁ、これから一緒なんだしさ)私の目の前で繰り広げられる会話に入ることなんて出来なくて、とりあえず逃げようともがく。カノさんが騙した。いや、もともと怪しいとは思ってたのに…!どうやら、ここにいる人達は能力を持った人たちらしい。…私のような。

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