短い話 | ナノ
「あーずーま、せーんせっ」
「…あぁ、名前か」
「何よ。私じゃなくてあきらだったら良かったの?」

家に入ってみれば、机にうつ伏せて寝ている晃一。別にそういうつもりで言ったわけじゃない、と晃一は言って起き上がってテレビをつけた。どうやって入って来たか聞かないの?と言う私に、玄関開けたまんまだったからね、と笑った。
なーんだ、つまんない。

「で、何の用?」
「別に用とかないけど、暇だったから」

晃一の冷蔵庫の中を見るとあまり食べ物や飲み物が揃ってなくて、またもとの場所に座った。人の冷蔵庫を勝手にあさるな、と注意されたけど、いまさらじゃないそんなの、と言うとまあそうだけど、とまたうつ伏せた。
眠いのかな?あきらが言うには最近残業とかがあった、って言ってたけど…。

「なんか食べた?」
「何にも。さっき帰ってきたばかりだから」
「へえ。あ、じゃあ私が作ってあげるよ」

でも冷蔵庫なにも入ってないの見ただろ、と晃一は言った。大丈夫、と笑って買って来てるしと買い物袋を見せると、用意周到だねと晃一も笑う。
もちろんよ、私を誰だと思ってるの。ふふん、と自慢げに笑って言うと、はいはいと流される。む、ときたから、ちょっと驚かせてやろう。

「私ね、告白されちゃった」
「へえ、……は?告白って、誰に」
「え、気になるの?」
「いいから、誰から?」

学校の生徒だよ、と笑うと、ガタンと机から落ちる晃一。どんだけ慌ててるの。
その子ね、もう卒業しちゃうから付き合えますよねって言ってきてさー。実際かっこいいんだよね。優しいし、かっこいいし、人気者でモテる!そんな子が私のこと好きなんだって。ちょっと迷っちゃったんだけど、年齢のこととかあるからって言って断ったの。だけどさ、年齢とか関係ないです。先生以外に好きになれる人、絶対にいませんって言われて、どうしよっか。

「どうするって、そんなの断るだろ」
「えー、でもさ、もう卒業しちゃうし。関係ないでしょ?」
「……あっそ、勝手にしたら」

あら、こんなに怒っちゃうなんて思わなかったなあ。冗談だって。ちゃんと断ったよ。晃一の髪の毛を触りながらそう言うと、それが普通だろと一言で流された。む、だって私たちもう20代の後半だよ?30までには結婚して子供を産みたいの。だから迷ったんじゃない。晃一は男だから分かんないかもしれないけどねっ。嫌味っぽく言えば、むくりと起き上がって私を見た。な、なによ。

「じゃあさ、」

ピンポーンと遮るようにチャイムが鳴って扉が開かれた。


わたしとあなたの近い未来

こーちゃーん、名前ー。と玄関で呼ぶ声が聞こえて、晃一は嫌そうにあきら…と呟いた。私は玄関まで言って、あきら遅いと言うと、おつまみ何にするか迷ってさーと笑った。ビールの袋とおつまみの入った袋を持ったあきらと晃一のもとへ戻ると、名前が呼んだのと聞かれて、あれ、言ってなかったっけ?と言うと、はああとあからさまな溜息をつかれた。

0321
東先生!あの笑顔が好きです。でもでも、あきらくんといる時のこーちゃんも好きです。未来は何、って分かる人には分かると思います(←)いや、きっとみんな分かるよ!