とくり、脈打つ。
ちろり、辿る。
喉が焼け爛れてしまいそうなくらい熱い空気を胸いっぱい吸い込んで、フランスはイギリスに口付けた。絡めた手を中心に上がる一方の体温が、まともな判断を下すことを許さないから。いつでもぽたり、目尻から滑り落ちてしまいそうな涙を拭うことも出来ないイギリスは、悔し紛れにフランスの舌を噛む。
「いてっ」
痛いよ、坊ちゃん。
苦笑したフランスに唇をぺろり舐められて、イギリスは酷く動揺する。至近距離で見つめたフランスの瞳が、あまりに情欲に濡れていたから。ごくり、まるで期待しているみたいに、喉が鳴ってしまった。
「はは、坊ちゃん。…誘惑、しないでよ」
俺、どうにかなっちゃいそう。
放たれたそのフランスの声が、完全に余裕をなくしてしまっていたから。イギリスはにやりと笑う。
「……どうにか、なっちまえよ」
そんで俺しか見えなくなって、ずっとずっと俺しか愛せなくなるといいんだ。
イギリスは秘め事を話すように、フランスに囁く。
「どうだ、愛の国」
これ、なかなか悪くない案だろ?
悪戯を思いついた子供みたいな顔をして、イギリスが言うから。
フランスは肩を竦めて、一言。
「異議なし」
そう言って、イギリスの手に唇を落としたのだった。