あつい。あつい。溶けて、しまいそうだ。
だからこれは、仕方ない、こと。
ね、キス、していい?
やけに扇情的な瞳でフランスが聞くから、イギリスはぴくりと口角と引き攣らせた。
なにいってんだ、どうせお前。
「嫌って言っても聞かねぇ癖に」
いちいち聞いてくんじゃねえよ、ばか。
不貞腐れたように落ちた言葉に拒絶の色は見えなくて、フランスは小さく笑う。だって、ほら、本気で嫌がらないじゃんお前。
「いっつも熱っぽい目で…俺のこと見てる」
イギリスの前髪を掻き揚げて、フランスは「でしょ?」と首を傾げる。ああ、イギリスは弱いのだ。フランスのこの顔に、弱いのだ。
フランスのこのとろけるような笑顔を知っているのは、自分だけだと痛いほどに分かっているから。
「……だって…暑い、から、」
だから。
そこまで言って真っ赤になって俯いてしまったイギリスの、まんまるい頭を愛しそうに引き寄せてフランスは低く掠れた声で囁いた。
「俺ん家、クーラーきいてるけど」
来る?
長年の付き合いだ。イギリスがどう答えるかなんてよく分かってるだろうに、何処か不安を滲ませたフランスを、イギリスは心底ずるいと思う。
そう、だな。
「暑くて、暑くて、死にそうだから」
だから。
「お前がどうしてもって言うなら、行ってやっても、いい」
言ってイギリスは、ふにゃりと笑ったフランスにとびっきり熱いキスを仕掛けたのだった。