少し機嫌が悪くなり始めたと思ったら見る見るうちに泣き始めた空を、フランスは黙って見上げた。こうして愚図るような雨のことをフランスは決して嫌いじゃない。だって、ほら、似ている。背中合わせの、腐れ縁に。


「ん」

貸してやる。
そう言ってぶっきら棒に差し出された真っ黒い傘に、フランスは苦笑した。相も変わらず美しくない大きさの傘だ。
イギリスが持つにもフランスが持つにも些か無骨すぎるそれに、フランスはゆるやかに首を振る。濡れるのは、嫌いじゃない。

「いいよ、別に。これくらいなら濡れて帰るし」

どっかの誰かさんみたいにね。
揶揄するようにくすり笑って、フランスはイギリスの首筋に小さくキスをする。
それだけで頬を染める愛しいフランスの恋人は、心なしか潤んだ瞳で俯いた。

「真似してんじゃねーよ」

お前が英国紳士になんか、なれる訳ねぇだろ。
ぼたり、落ちた言葉に、少しだけ羞恥を滲ませて。イギリスはずいっとフランスの腹に押し付けた。
勘違いすんなよ。

「これはお前が濡れたら嫌だとか…、そんな、そんな理由じゃなくて、」

と、とにかく俺の為、なんだからな!
そう言ったイギリスの顔が真っ赤で、とても熱かったから。
フランスは、ああ、と妙に納得してしまった。

「じゃあ、またすぐ、すぐ返しにくるから」

借りてくよ。
くすり笑ったフランスに、イギリスは隠しきれなかった嬉しそうな顔を向けかけて、慌てて視線を逸らす。
はは。坊ちゃん耳まで赤いよ?
からかうようなフランスのその言葉に「ばかぁ」と決まりの文句を一つ落として。
降りそそぐ口づけをイギリスは珍しく素直に受け入れたのだった。


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