ゼリーの中で溺れたみたいな、それは甘ったるい死。
苦しい、とイギリスは言って、こめかみに流れる涙を隠そうともしないままに、フランスに縋りついた。
苦しい。そんな言葉じゃ形容出来ないくらい必死の形相をしたイギリスの、小振りの頭をフランスはぎゅうと抱きしめる。ああもういつだって。
(言葉は知れば知るほどに、気持ちを伝える道を塞いでゆく)
圧倒的に足りない不確かな言葉のせいで、逆に困難になったかのように思える意思疎通は、時にイギリスを傷つけ、そしてフランスを傷つける。
ああもういっそ気持ちを伝える術なんて、こうして掻き抱く以外になくなってしまえばいいのに。そう思うことは何か冒涜しているだろうか?フランスには、わからない。
「イギリス」
大丈夫だよ。
何の意味も成さない言葉を、フランスはイギリスの耳元で囁く。その音が鼓膜を叩いても、イギリスはきっと何も変わりはしないだろう。
フランスは目を細める。無駄だとわかってながらも尚、手を差し延べる自分をしかし、愚かだとはどうしても思えなかった。
だって、こうしていなければ、イギリスが壊れてしまう。何故だかフランスの中にそう、形のない確信があった。
「イギリス」
泣かないで。
言ってもきっと、イギリスが笑うことはないのだろうけれど。
フランスは、それでも言わなければならないのだ。
「愛してる」
形がなければ、靄のように消えていく。それが想いで、心。
結局のところ言葉に依存した感情は、そう在り続けるしかもう、道は残されていないのだ。