つまりは終わりが見えないってこと。
だからみんな、困ってるんだろう?
なぁ、愛の国。
かけられた言葉にフランスは「ん?」と振り向いて、苦笑する羽目になった。
いやに深刻そうな顔をしている。特徴的な眉と眉の間にシワが寄ってるし、フランスを見つめるエメラルドの瞳がどことなく揺れている。フランスは肩を竦めた。
こういう表情をする時のイギリスは、何かを難しく考え過ぎている。とりわけ自慢出来ることでもないが、それくらいフランスは経験で分かる。
「なぁに、坊ちゃん」
いつもより糖分を多く含んだ声でにっこりフランスが笑うと、イギリスは何処か照れたような顔をする。
今更何を照れることがあるんだか。フランスは言いかけて、やめた。
どんなイギリスも、可愛いのは変わらない。むしろそういう反応の可愛さはいつもの数百倍だと思うのだから、つくづく重症だ、とフランスは心の中で自分自身に手を合わせた。ご愁傷様です。
思ってフランスは、イギリスの頬に手を遣った。
「なに悩んでんの」
微笑んだフランスに問われて、イギリスは言葉もなく俯く。ゆらゆら揺れたエメラルドが、隠される。
フランスは溜め息をついて手を降ろした。
「…何が怖いの、坊ちゃんは」
お兄さんに、教えてよ。
言ったフランスに、イギリスは驚いたように顔を上げた。なんで、と音もなく呟く。
わからない訳ないのに、とフランスは苦笑した。イギリスはそんなフランスに、揺れる瞳を向ける。
「こんなの、おかしい」
おかしいよ、フランス。
凛とした声で言葉を紡ぐ姿は、どこか痛々しい。イギリスの言いたいことがフランスには何となく分かるから、眉を潜めた。
今更なんだよ、と。
「…先のことは、考えなくて良い」
ねぇ坊ちゃん?
溶けそうな程甘い声と共に降ってきたのは、啄むようなキス。
フランスにしては珍しい控え目な口づけに、イギリスは目を見開いた。
多分それは、ちっぽけなキス一つに、色々なものが詰まっている気がしたから。
「愛してる」
つまりはそういうこと。