形で縛りたかった。
ただ貴方を、型に嵌めたかった。

変わらない確かなものなんて、俺達みたいな存在には本当に希薄でアリエナイから、だから、作ってやりかったっていうのもある。与えて、与えられる。そんな不可視の幸せが欲しくて、求めた。

「坊ちゃんは、いま幸せ?」

日常会話の中に潜んだ核心。他愛ない会話の中に秘められた罠。
問われたイギリスはきょとんと首を傾げて、何だかよくわからない刺繍をしていた手を止めた。

「…それは国として?"俺"として?」

そう言ったイギリスは俺の方を向いて、ソファの背もたれに頬杖をつく。感情を凪いだ読めない無表情は、昔っから変わらない。いつだってイギリスは変わらない。
無論、坊ちゃん個人として。言うと、イギリスはにんまりと口角を歪めた。

「幸せだって、言わせたいのかよ?」

意地悪な顔した我が愛しの女王様(本人に言ったら怒るだろうけど)は、猫みたいにしなやかに俺の目を覗き込む。
当然でしょ。と抱きしめてやるとくすり、耳元で笑う声がした。

「そんなの、傲慢だろ」

何もかもを言葉にしたがるのは、ただの我が儘で、身勝手で、そして酷い冒涜だ。
そう言ったイギリスは俺の頬をするり撫でる。感情は、そこにそう存在するから、うつくしい。
でも、それでも。

「例えば…例えば朝起きたら朝食がある。風邪を引いたら看病してくれる。怪我したら心配してくれる。本気で喧嘩出来る。優しい声で、俺の名前を呼んでくれる。泣いて、怒って、そんで最後には、一緒に笑ってくれる」

意地っ張りな俺を、辛抱強く待ってくれる。
イギリスはそう言って俺に口付けた。
そんな奴がずっと隣にいる俺を。

「言葉にするなら、勝手にしろ。多分、お前が思った通りの答えだから」

言ったイギリスは俯いて、俺のシャツをぎゅっと握った。
そんなに下向いて顔が見えなくしてもね、イギリス。耳まで真っ赤なの、お兄さんはちゃあんとわかってます。
隣に、心許せる奴がいることをなんて呼ぶかなんて、考えるまでもなく知っている。だって、俺がそうでしょう?

形を成した気持ちの名前は、



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