お前のこと大っ嫌い。
にっこり笑えば、きっと慌てふためくだろうと思ったのだ。

ぽたり、落ちた雫に、フランスは目を見開いた。そして端正な顔をくしゃくしゃにして、「あ…、」と意味を成さない言葉を落とす。
予想外の事態についていけない脳がオーバーロードを始めて、ひどく熱い。考える為に必要な全ての回線が焼き切れてしまったかもしれない。
そう心配してしまうほど、真っ白になった頭からは何のフォローも生まれてはこない。

イギリスが、泣いている。

慰めなきゃ、と反射的に思って、こうしたのは自分だということに気づく。
不安定の延長線上にあった付き合いに、否定の言葉を紡いだのだ。均衡を崩したのは自分だ。悪いのは、全部。
フランスは「ああもうクソッ」と小さく舌打ちをした。それは気品を重んじるフランスらしからぬ態度ではあったが、元々は腐れ縁でご近所のイギリスしかいないこの部屋に、それを咎めるものはいない。

「…坊ちゃん?」

濡れた頬に触れようとした手を、ぱしりと払いのけられて、フランスは大層驚いた。
これは、拒絶だ。れっきとした、拒絶だ。今までイギリスがしてこなかった拒否を、されているのだと。
坊ちゃん、ともう一度呟いて、フランスは強引にイギリスを抱きしめた。

「ッ、に、すんだよ!放せよ!」

牙を剥いた猫みたいにイギリスはじたばたとフランスの腕の中で暴れる。が、そんなことで切れる愛じゃあない。
フランスはごめんね?と呟いた。

「エイプリルフールの、嘘のつもりだったんだけど」

お前、お得意でしょ。
そう言ったフランスは、イギリスの耳元で「愛してる」と呟いた。
それがもうお昼を過ぎた頃だったから。

イギリスはばかぁ、と顔を赤くして、その広い胸にしがみついたのだった。


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