ひどいな、とフランスは言って、苦笑した。
顔をくしゃくしゃにして、切なそうに笑う。それがこの男の傷ついた時の顔だった。

とさり、壊れ物でも扱うようにベッドへ押し倒されて、イギリスは酷く赤面した。
イギリスはどうも苦手なのだ。ことが始まってしまえばもう何もかも、上も下も浄も不浄も判別出来なくなってしまうのに。
なのに、この一瞬だけは違う。理性が残ったままで、恋人と向き合う羞恥を、味わわなければならないのだから。
ああもう、くそ。イギリスは軽く舌打ちをして、じとりと覗き込んでくるフランスの目から逃れようとする。
いつものような軽口に、反論してこないから悪いのだ。疲れていたのか何なのか、イギリスの息つく隙もない罵詈雑言に、「ひでーの」と言って笑うから悪いのだ。
酷いのはどっちだ。
イギリスをもう二進も三進もいかなくしておいて、未だ眉を顰めるフランスの方が、そりゃあ酷いに決まっている。いつものように「このむっつり眉毛!」とか何とか言って、思い切り吐き出してくれれば、いいのに。

「ん、」

首筋を舐め上げられて、イギリスは身を捩った。沢山のざわざわしたものが、這い上がってくる。それがどうしようもないこの男への愛しさだと、イギリスは知っているのに認めない。
認めたく、ない。どうしようもない男に、どうしようもなくハマっているのだと、認めたくない。
それでもフランスはイギリスのシャツを、ベルトを、これでもかというくらいゆっくりと取り払っていく。優しいその手つきで、イギリスはわかってしまうのだ。

「なに我慢…してんだ、ばかぁ」

いつもベッドの上では我が物顔でイギリスをくちゃくちゃにする癖に。
今日に限ってそうしないなんて、本当に質が悪い奴だ。イギリスは潤んだ瞳をフランスに向けた。
ああもうだから、これは愛しさや優しさなんかじゃなく、いつもと違う気持ち悪いフランスを見ているとこっちまで気が滅入るって、そんな話。だから、だから。

「全部俺ン中に吐き出しちまえ、ばか」

愛してる。
滅多に言わない、率直で直球な愛の言葉を囁いてやると、フランスはみっともなく頬を赤らめた。
な、に、それ。

「愛の国も、形無しじゃない」



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