愛してるって、言え。

何百年と続いた片想いを越えてフランスと付き合いだしたイギリスの口癖といえば、概ねそんな感じだった。
二人きりになると一度は必ず言うから、フランスはその度に頭を鈍器で殴られたような気になる。ぐらぐらと脳を揺さぶられて、そこに立っていることすら出来ないような、そんな衝撃。
どんなに言葉を尽くしても、次に会う時にはまたイギリスは愛を要求するのだから。

「愛してる。世界でアートだけ」

口に馴染んだ言葉を、口に馴染んだようにフランスは言って、イギリスの頭をくしゃくしゃに掻き混ぜた。
こうして言い聞かせるように甘美な言葉を響かせたって、何も変わらないことをフランスは知っている。悲しいくらいに凪いだイギリスの心に、フランスは何の波紋も残せないのだ。
がらり、足元がぐらつくフランスの手をいつだって見ないフリするイギリスは、本を繰る手を止めたりしない。薄っぺらい(少なくともイギリスはそう思っている)愛の言葉なんかで何か変わったり、しない。

「そうか」

興味なさそうに視線すら上げないイギリスは、そうとだけ言って、何も言わなくなった。
フランスは泣きそうに眉尻を下げて、俯く。
ねぇ、アート、聞いて。信じて。

「…俺は、お前だけを、一番、」

愛してるんだ。
空しく響いた愛を、本来なら受け取るはずの心は、頑なに首を振った。



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