言葉が、飽和している。

伝えたいこと、隠しておきたいこと。
ぐちゃぐちゃに混ざった頭では、胸を張って正しいと言える答えが見つからなくて、イギリスは壁にもたれ掛かった。
どうしよう。今のよくわからない気持ちを一言で現すとしたら、多分それが一番近い。どうしよう、どうしたら。どうしようもないことをわかっていながら自問自答するのだから余計に混乱して、わからなくなる。ぐるぐると回る思考が明確な言葉を吐き出してくれることを願っても、それは実現しない。だって答えを弾き出すのは、他でもない。
イギリスでなければ、ならないのだから。

『…伝えたかっただけだから、』

幾百と繰り返した声を咀嚼するようにまたなぞって、イギリスは頭を抱えた。ああもうほんと、どうしよう。

『拒絶してもいい。忘れても。だけど、否定だけは、しないで』

忘れられる訳がない。そしてきっと、拒絶も否定も。
イギリスには、出来ない。
長いこと隣にいた彼のあんな悲愴な表情を、あんな悲痛な言葉を。
イギリスは、知らないのだから。

『好きなんだ』

知ってた、それくらい。そうは言えなかった。それを聞いた瞬間、耳から溶解してなくなってしまいそうで、イギリスは逃げるように(いや、実際逃げた)走り去った。
ずっと今のままが一番いいと思っていたから、イギリスは泣きそうに顔を歪める。なにが、不満なのだろう。変わらなきゃいけない理由が、彼の言った全てに詰まってる気がした。

「好き、だ」

何となく口に出すと、すとんと、落ち着いた。
上も下も右も左もわからない混沌の世界が、いきなりがらがらと崩壊したような、そんな。

「あ…」

見事に視界が開けたから、畜生とも言えなかったイギリスは、ただただ軽くなった頭をふらふらと振った。
シンプルすぎる解答を見つけた脳は意地を張ることさえ忘れて、あの憎らしい髭面の元に走れと指令を下した。


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