笑っちゃうような、そんな話。
可愛くないなぁとフランスが囁いたから、イギリスは思いっ切り顰めっ面をしてフランスの手の甲を抓った。
可愛くなくて結構。俺は男だ。
視線だけでそう告げたイギリスはふいり、顔を背ける。伏し目がちに遠くを見つめるフリをして、手にした資料をくしゃり丸めた。ああ、今日の会議は最悪だった。
アメリカは人の話を聞かないしドイツは堅物だしイタリアは寝てるしフランスは反対しかしないし。そして。そして何より。
「声は、出ないし?」
思考に被るように、にやにやと頬を緩めたフランスが顔を覗き込むから、イギリスは眉を寄せてフランスを睨んだ。誰の所為だよ、ばか。潤んだ瞳が詰るから、フランスはわざとらしく肩を竦めてみせる。
「…当然、季節の変わり目に弱くて朝から喉の違和感に気づいてたのに、熱っぽい視線でお兄さんを誘惑した坊ちゃんの所為でしょー?」
体調悪いならそう言わないと。
イギリスの頭を撫でて、フランスは溜め息をついた。
一昨日まで高熱を出して寝込んでいたイギリスは、フランスの言葉に唇を噛んで地団駄を踏む。誘ってなんかいない、テメェが勝手に盛ったんだろ!そう鋭い視線で述べたイギリスは、フランスの整った顔を殴ってやろうと、拳を固める。が。
「ざんねーん」
流石に、お兄さん病人には負けませーん。
言って手首を取ったフランスは、そのままイギリスの唇に、自らの唇を重ねた。
「…………ッ」
やばい、移る!とイギリスが思った時にはもう遅く、舌の根まで絡めたフランスの目が、にんまりと笑った。
すぐにかくり、と膝から力が抜けたから、フランスはイギリスの腰を引き寄せる。
「…、お兄さんのテクに腰くだけってやつ?」
「…ぃ…ってろばー…か」
酷い声で軽口に答えたイギリスは、それでもフランスに縋り付いたまま。笑う膝が恨めしくて、イギリスは涙の浮いた瞳でフランスをねめつけた。
移っても、しらねーぞ。そんな思いを込めた視線を、しかしフランスはくすりと笑う。
「どうせ隣国。風邪引く時は道連れ、でしょう?」