のぼせちまう、とイギリスが言えば、もうお兄さんにのぼせてるでしょ?とフランスは笑う。
下らないと一蹴すれば、降ってくる、キス。
情事後のバスタイムは言わば熱くなり過ぎた自分を反省する為の時間だとイギリスは思うのだが、二人で入る場合はそうもいかない。
イギリスは、フランスの濡れた髪が好きで、赤らんだ肌が好きで、湯を張ったバスタブに浸かる時の、一瞬だけ歪む顔が、好きなのだから。
先程までの熱を冷ますなんて、到底無理な話。
「ん、」
かぷり、と首筋に噛み付かれて、イギリスは控えめに声を上げた。その様子にくすくすと笑うから、イギリスは潤む瞳でフランスを睨んでしまう。
迫力がないと言うよりむしろ誘っているようにすら見えるイギリスの表情に、フランスは「可愛い」と囁いて、赤い耳たぶに歯を立てた。
「可愛く、ねぇよっ…ばか…ぁ」
ちゃぷんと。
暴れる度にイギリスを抱きしめているフランスの顔に乳白色の湯が飛ぶのだが、イギリスはどうやらそんなことを気にしている様子はない。
同じ色のものならもっと違うものを、と親父めいたことを思って、フランスは苦笑した。イギリスに知れたらきっと大目玉を食う。
「ほら、坊ちゃん、暴れないで」
背中、染みるから。
言ったフランスに、イギリスはにんまりと口角を上げる。自業自得だ、ばぁか。
「…それに、そういう顔、嫌いじゃねぇし」
イギリスが顔を俯けて言うから、フランスは「何ソレ」と笑ってしまった。女王様気質も程々にしろよ?
フランスの言葉に、イギリスは目を閉じた。
「でも、嫌いじゃねぇだろ?」
「…どんだけMなの、お兄さん」
お前の中で。
言ってフランスは、そんな気まぐれな猫のようなイギリスの唇に、軽くキスを落とす。
「まぁね。嫌いじゃない、どころか」
メロメロだよ、アーティ。
「…だよな」とイギリスがはにかむから、ミルク色の湯舟に負けず劣らず白い首筋に、フランスは顔を埋めたのだった。