「ハンカチ」
「却下」
「花束」
「却下」
「お手製のお菓子は」
「そういうの重い」
「思いきって下着とか」
「死ねくそ髭」
というか、なんで俺に聞くんだばか。
気に入らねぇ。
ぽつり呟いたイギリスに、フランスはくすり笑った。
だって坊ちゃんくれなかったじゃん。
「…それともなに、ヤキモチ?」
そう言ったフランスは、イギリスの頬に指先だけで触れた。特徴的な眉毛を寄せたイギリスは、そのフランスの指から、視線から、逃げるようにして顔を逸らす。
いつもなら鉄槌が下るはずのそんな軽口に、逃げの姿勢を示すなんてイギリスらしくない。フランスは首を傾げる。どうしたの。覗き込んで、フランスは酷く驚いた。イギリスの目尻に涙が溜まっていた。
「……そうだよ」
イギリスがぼたり、涙と共に落とした言葉に、フランスはその青玉の瞳を見開かせる。そう、ヤキモチだよ、ばかぁ。唇を噛んで睨みつけるイギリスに、フランスは肩を竦めた。あぁ、もう。
「ごめんね」
お兄さんが悪かったよ。
バツが悪そうに髪を掻き上げたフランスは、そう言ってイギリスの頬を伝う雫をべろり舐めてやる。
ほんとは、ほんとはね。
「バレンタイン、ひとつも受け取らなかったよ」
お兄さんには、可愛い恋人がいるからね。
フランスがすまなそうに眉尻を下げるから、イギリスはどういうことか聞く必要もないくらい、わかってしまった。
ああ、そうだ、フランスは俺だけを。
「あいしてる」
思考と重なって聞こえた言葉に、イギリスは肩を震わせて泣いた。何だよそれ!ずるいんだよお前!
「責任とって三倍にして返せ、ばか」
胸倉を掴んだイギリスが、フランスの唇を塞いだ。
何それ。バレンタインの代わり?
フランスはそう言うことも出来ないまま、甘いキスを深めるべく、イギリスの後頭部を掴んだのだった。