ざわざわ。ざわざわ。
雨が、きやがる。

フランスがイギリスの邸宅に着く頃には既に空は泣いていた。特に珍しいことのないイギリスの雨は、今日みたいに暖かい日だと余計鬱陶しいことになる。
国のことなんかではなく、無論それを体現する、人の話だ。

今日は上がいい、と言ったイギリスに、フランスは別に反論しなかった。そういう気分なら、乗ってもいいよ。呆れたように肩を竦めたフランスは、そう言ってイギリスの頭を撫でた。
動くのも億劫な湿気の中、フランスはイギリスの手を引いて、ベッドに倒れ込む。小振りな頭を抱きかかえてするり、シャツのボタンを外しかけると、イギリスは少しだけムッとしてフランスの手を掴んだ。

「いい」

自分で、やるから。
フランスのシャツに手をかけたイギリスはそう言って、ねだるように首筋に噛み付いた。どれだけ扇情的に誘ったところで、イギリスはフランスが身勝手に動くことを許さないだろう。それをわかっているから、フランスは容易に手を出さない。
まな板の上の鯉?というより、まな板の上の恋。大人しく、捌かれるのを待っている。それも、恋人の手によって。

「ん、」

湿った唇が落ちてきて、曇った眉間が苦しそうに息を吐いた。既に取っ払われた下着、ふるふる揺れる腰。
ちょっとちょっと、性急すぎない?そう慮る言葉すら紡げないフランスは、イギリスの舌を甘く噛んでやる。それがブレーキになるだなんて馬鹿なことを考えてる訳では、ないのだけど。フランスはイギリスの望む痛みを、あげなくてはいけなかった。だから。

「ふぅ、んっ、フ…ラン…」

熱いと言ってのけたイギリスの充血した瞳からぼたりと涙が滑り落ちて、フランスの胸を濡らす。それがちょうど心臓の辺りだったから、フランスはずるいなぁ、と思う。こんなの、体のいいダッチワイフじゃないか。ああ、でも、ワイフじゃないから、ハズバンド?どうでもいいことだろうけど。

「坊ちゃん」

坊ちゃんの、好きにしていいから。
言ったフランスは汗で額に張り付いたイギリスの髪を払ってやる。そうしたフランスの顔がとても悲しそうで、イギリスはぴくりと動きを止めた。ああひどいことをしている。イギリスは唇を噛む。

「ああ、こら」

咎めるように目を眇めたフランスはイギリスの鼻の頭をかぷりとかじった。
慰み者にだって、なんにだってしていいよ。だから。

「俺の前で、泣くのをやめたりしないで」


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -