あら。なぁんだ。
気づいて、なかったんですね。

ムカつく、とイギリスが宣ったから、極東の友人はううんと首を捻った。
だってそれ、いつものことじゃないですか。
イエスでもノーでもない、曖昧な言葉を生み出す彼の唇は、そう友人に言ったりはしない。否、出来ないというのが、正しい表現なのかもしれないが。
優柔不断なお国柄の彼、日本は困ったように「はあ…」と肩を竦めた。イギリスは多分、それを同調だと思い込んだだろう。

「…結局、俺も遊びなんだよ」

あいつにとって。俺は、遊びでしかない。
小さく呟いたイギリスが泣きそうな顔をしていたから、日本はびくりと表情を強張らせた。そんなことない、それはちがう。
だから日本は、言う。彼らしくない、強い否定の意思を滲ませて。

「そんなこと、仰らないで下さい」

あの方がイギリスさんだけにしていることって、あるでしょう?
まるで諭すような言い方だと、思う。でも、イギリスは知らないのだ。もしかしたら知らないフリをしているのかも、しれないけど。
イギリスの恋人であるところの彼が、どれだけイギリスを愛しているかだなんて。当人にはきっとわからないのだ。

「たとえば」たとえば、なに?とイギリスが子供みたいに首を傾げるから、日本は呆れてしまった。なんで、なんで、気づいてないんですか!
そう、たとえば。

「イギリスさんに触れる時の、手。イギリスさんを見る眼差し。どんな時だって、イギリスさんにだけは本当に怒るところ」

それはきっと愛しているからこそ、出来ること。日本が遠い昔に、閉じ込めてしまったものだ。だからこそ、わかる。
イギリスはちゃんと、愛されているのだと。
なんだ日本、お前。イギリスが驚いたように目を見開いた。

「そんな顔、出来るのか」

言われて日本は、ふふふと笑う。
それはミステリアスで、しかして魅力的な笑みだった。

「友人のため、ですからね」



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