くだらない意地も高いプライドも捨ててしまえば、ほら、見えてくるものがあるだろう?
これは遊びであって、決してそれ以外の意図を持つものではない。遊び以下でも、以上でもなく、特別な感情など、見出だしてはいない。いけ、ない。
イギリスはふと溜め息をついて、顰めた眉を解放してやった。
代わりと言わんばかりに握りしめた手の平に爪を立てると、いつもより少しだけ赤い顔のフランスが、咎めるようにイギリスの耳をねぶる。
「ぅ、」
情けなく膝を震わせながらイギリスが呻くと、フランスはなんだか満足げな顔をして、イギリスの腰をゆす、と揺さ振った。
くそったれ。言葉にならない罵倒がイギリスの喉の奥をじわじわと焼いていく。このまま、ぎりぎりのところで引き止める理性か、溢れ出してしまいそうな感情かどちらかを焼き切ってしまえれば楽なんだろうなとイギリスはぼんやりと考えた。
「ねぇ、イギリス」
なに考えてるの。
言ったフランスが今まで舌で弄んでいた耳たぶをがりり、少し強めに噛んだから、イギリスはその問いに答えられなかった。
ふるり首を横に振ってイギリスが拒絶の意を示すと、フランスは面白くなさそうに腰を進める。そんな顔したって、フランスはイギリスを縛ることの出来る立場にはないのだから、仕方がない。ただ肌を重ねる。それだけの関係、それだけの縁。
「ん、ぁ、やぁっ…ああ…ッ」
痛いくらいに最奥を穿たれて、イギリスはフランスの背中に爪を立てる。そうすることによって歪むフランスの余裕がない顔が、イギリスのお気に入りだった。
勿論、情欲に浮かされたイギリスの瞳には、滲んで映らないのだけど。でも、そうして余裕のない顔をしてることは知っていたから、イギリスはにんまりと笑ってみせる。だって、まるで、本気で愛されてるみたいじゃないか。
「…イギリス」
フランスが呟いた言葉は、イギリスの耳には届かなかった。
いや、届かなかった訳では、決してない。
ねぇ、せめてこんな時くらいは。
「俺のことだけ考えててよ」
イギリスはその言葉を、都合のいい夢だと思うことにした。