だれにでも言う癖に、とイギリスは言った。
お前にしか言わない、とフランスは言った。
嘘つくなよ、とイギリスは首を振る。
嘘じゃない、とフランスは首を振る。

愛の国だというフランスが、言い慣れた言葉を言い慣れた風に言っただけ、それだけなのだ。
イギリスは思って、ふるり肩を震わせた。
ちがう、お前は、そんな。
涙の代わりにぽたぽた紡がれる拒絶は、フランスの喉元に刃を突き立て、深く抉る。そんなこと到底知らない、知ろうともしないイギリスは無意識に一歩、フランスから距離をとった。

「嘘つき、ほんとはそんなこと」

思ってねぇんだろ。
ふいと顔を俯かせたイギリスにフランスは言葉を失ったように目を見開いて、手の平に痛いほど爪を立てた。
信じられないと言ったイギリスの表情が、あまりに悲痛であったから。フランスは呼吸さえ忘れた心地になって、ちがうんだ、とかぶりを振る。

「愛してるんだ」

胸の当たりを押さえてフランスはイギリスに訴えた。もうずっと昔から、お前しか見えない。苦しいんだ。お前を想うだけじゃ、とても足りない。
それでもイギリスは耳を塞いでフランスを拒む言葉を生み出す、それだけ。
フランスはいい加減焦れったくなって、一切の音を遮るイギリスの手をとった。冷たい冷たいイギリスの手が、ぴくりと痙攣する。
俺はね、イギリス。

「ずるい算段とか遊びとか政略とか、そんなものは、なんにもない」

ただお前を愛してるってことを、お前に伝えたいだけ。
フランスはイギリスの目を真っ直ぐに見据えながら、そう言い聞かせる。まるで、親が子に道徳を教えるような、そんな感覚。
それでもね、と、フランスは続ける。

「…伝えるだけじゃ足りないの」

俺の半分でも、その半分でも、もっと少しでもいい。

「俺はお前に、愛されたい」

それを聞いたイギリスは、何言ってんだ充分お前はずるい奴だ、と言って、落ちてきた唇に噛み付いてやったのだった。


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