泣きたいなら、そうすればいい。
ご覧の通り、それでも世界は止まらない。
大仰に肩を竦めて、イギリスはフランスのふわり柔らかい髪に顔を埋めた。
耳が痛くなるほどの静寂の中、多分そうしているのが一番自然なことだと思ったから、イギリスは恥も外聞もかなぐり捨てて、フランスにしがみつく。
なぁ、フランス。フランス。
「おねが、い」
滑り落ちたイギリスの言葉に、フランスは痛いような苦しいような顔をして、イギリスの決して広くない背中に手を回す。
慰めるつもりはない。
ただフランスが悲しい顔をしているのが、イギリスは気に入らない、それだけ。
だって、剽軽者のフランスがこんな顔をするのは、イギリスのせいだ。
それが、ひどく、もどかしい。
なぁ。おねがいだから。
「いつもみたいに笑ってみろよ…っ」
そんなのお前らしくない。
言ったイギリスに、それはこっちの台詞だろうとフランスは緩く首を、振る。
ごめんね。アート。
「笑えない、よ」
フランスの喉が、ひくり鳴った。
お前、が。
「お前がいなくなるのに、笑え、ないよ」
悲痛な呟きを聞いたイギリスは、ばぁか、と笑って。
「ごめんな」
そしてなにもかも。
弾けて、消えた。