それはつい昨日まで、キラキラと輝いていたはずなのに。

ぱちん、と。なにかが弾けた気がして、イギリスはぱちくりと目を見開いた。
例えばそれは、自分の中の何かが音を立てて崩れたかのような、その奥から得体の知れないものがじとりこちらを見つめているような、肌が粟立つほどに不自然な感覚。
ぎしり軋みが、中から自分を壊していく気がして、イギリスはぶるり背筋を震わせる。
何故そうなったのか、イギリスには見当もつかない。突然、なんの前触れもなくそれはきっと、死んだ。
現れた闇が何もかもを飲み込んでしまいそうなその感覚に、反射的にイギリスは恐怖を覚えてしまった。それが、多分、最初の間違い。
その奥に覗いた闇の正体を、イギリスは嫌というほどわかっていたのに。

これは夢だ、と、イギリスは小さく零した。
悲痛なその呟きに、耳を貸す者など到底いるはずもなく、ただただ通り過ぎていく世界の中、イギリスは気づいてしまった。

「、うそ…だろ」

落ちたイギリスの言葉は完全にその事象を拒んでいるのに、一度知ってしまった自分の気持ちはどうしようもなくそれを肯定している。どれだけ首を横に振ろうとも。どろり染み出した闇は、なくなってくれない。
イギリスはぎゅっと唇を噛んだ。
だって、俺は何も。

「なにも求めてなんて、ない」

そんなものいらない。いらないんだ。
まるで弁明でもするかのように頭を抱えて、はひはひと浅く肩で息をする。
イギリスは、気づいてしまった。

己が、酷く枯渇していることに。

そしてその渇きが、どうすれば満たされるかも。
気づいてしまった。
しかし気づいてしまっても、認められなかった。イギリスは、泣きそうに顔を歪めながら、呟いた。
違う。違うんだ。俺は。

「俺はフランスなんて、」

いら、ない。
そう言った瞬間、何か、大切な箇所が、ずきり痛んだ気がした。気のせいと言って済ますには、脈打つように傷口が熱を持って、イギリスはその場に蹲る。
イギリスはわかっていた。気づいていた。知っていた。

そうだ。
死んだのは、理性だ。




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