つまりそれを一文字で表すと?
馬鹿だなぁと言われて初めて、イギリスは目尻に溜まった雫を拭った。
特に他意のない、イギリスにしてみれば当たり前の虚勢だったのだが、呆れたような顔をしたフランスは溜め息を吐く。
あんねぇ、坊ちゃん。
「そういうの、お兄さんはあんまり好きじゃないよ」
それくらい知ってるでしょ?
言ったフランスは涙の跡が残るイギリスの頬を微かに撫でた。ねぇ、ちゃんと、言って。
いつだって意地っ張りなイギリスが、その優しい体温を素直に受け取ることなど出来るはずもなく、きつく唇を噛んでフランスからぱっと顔を背けた。
「べつにお前に好かれなくても、いい」
俯いたイギリスはそう言って、震える息を吐き出す。なんとなく、そうしないと壊れてしまうと思った。
またツンと痛んできた鼻の奥は気にしないフリで、イギリスはフランスに告げる。俺、俺は。
「お前なんか、大っ嫌いだ」
精一杯の鋭い声でイギリスが言うから、フランスはほとほと困り果ててしまった。
だって、フランスは知っている。イギリスのことなら、何だって知っている。
少なくとも、フランスはそう思っている。
ばぁか、と、イギリスの常套句を呟いて、フランスは強張った肩を抱き寄せた。
「意地っ張り」
ほんとに、ばかだよ。
言ったフランスはくすり笑って、イギリスの耳にキスをする。小さいリップ音を残して、すぐ離れた触れるだけのそれに、イギリスはゆるりと目を瞑った。
「お前の方が、俺よりずっとばかだろ」
言ったイギリスに、ああそうだねとフランスはくすり笑う。
「こんな面倒臭い奴が、愛おしくて仕方ないんだから」
それを一文字で表すと。
つまりは、愛ということ。