どうしてこうなったのか。
分からないほど、馬鹿ではない。

鬱蒼と茂った木々が、燦々と輝く太陽を隠してしまった。
多分それは一瞬の出来事で、誰も気に留めないような些細な事象だったのだと思う。無造作な子供の指が、この世で最も神聖な、不可侵の領域を壊してしまった。
それだけの、こと。

愛してるよ、とフランシスが囁くから、アーサーは悲しげに首を振った。やだ。ちがう。そういうのはダメだ。
言ったアーサーに溜め息をついて、フランシスはアーサーの首筋にキスをする。

「どうしてそういうこと言うの、坊ちゃんは」

お兄さんに悪いところあったら直すから、ちゃんと言って。
甘い匂いのするアーサーの髪に唇をつけて、フランシスはそう嘯く。あまりに真剣なその声音にアーサーはびくり身体を震わせて、それでもフランシスから逃げるように顔を背けた。

「坊ちゃん」

咎めるようにフランシスはアーサーを呼び、冷たいその手に自らの手を重ねる。
ねぇ、信じて。そう、言って。

「ずっと、傍にいるよ?」

坊ちゃんが嫌がっても、ずっと。
そう宣ったフランシスの手を振り解き、アーサーはぼたり涙を零した。
無理だ、そんなの。

「俺は、いつだって独り、だ」

言って走り去ったアーサーの背中を追いかけることすら出来ない惨めな男は、力なく壁にしな垂れかかった。
あーあ。

「……畜生」


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