するり滑った指先が、冷えて。

ごめんね、と言うと、謝るなと言われたから、フランスは慌てて口を噤む。
ぼたり落ちたイギリスの涙さえ拭えないフランスは、だから手の平にきつく爪を立てた。
これよりもっとずっと痛い思いを、イギリスはしている。そう思うと、この喉を、腹を、掻っ切ってやりたくなった。

「別れよう」

恐いくらいに静かな部屋の中、フランスはたった一分前に言った最良の選択を、もう一度反芻した。
ぐらぐら、地面が歪む。吐き気がする。ここで泣くのは自分の仕事じゃないから、フランスはゆるく首を振って、禁じられたはずの謝罪をまた口にした。ごめん。ごめんね。
この場合、全てに於いて悪いのはフランスだ。それくらいわからないフランスではないし、また、イギリスでもなかった。

「イギリス」

ねぇ。イギリス。
フランスは、嗚咽でもうまともな言葉を紡げないイギリスを、抱きしめる。
ごめん。ごめんね。

「愛してた、よ」

身勝手な愛の国は、どうしたってその腕をほどくことが出来なかった。



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