無為な行為だと、そう思っただけだ。

「なんで、俺を抱くんだ?」

情事後の、しかして甘い空気など微塵もないベッドの中、ふと形を成した疑問。
イギリスは当然フランスの顔なんて見てはいなかったし、特に明確な答えを期待していた訳ではない。ただ、戯れに。ただ戯れに、愛の国を自称するフランスの、まかり間違っても愛などないこの行為を暗に揶揄してやりたかった。それだけだ。
それなら聞くけど。フランスは眉を寄せながら言う。

「坊ちゃんはなんで俺に抱かれるの」

無論フランスのそれも、明確な答えを期待した問いではない。ただ戯れに、意地悪な質問をされたから、意地悪に返した。それだけだ。
そんな足掻きをイギリスは鼻で笑って、フランスの目を見る。吸い込まれそうに深いサファイアの中に己が映っていることに、何となく吐き気がした。

「最も安易な、性欲処理だろ」

手間も金もかからない、単純明快な。
言ったイギリスはにんまりと口角をあげて、挑発的に笑ってみせる。
妖艶とも言えるその仕種に、フランスは心底疲れたような溜め息をついて、イギリスの汗ばんだ髪をくしゃり撫でた。

「俺は、違うんだけどなー」

困ったように眉尻を下げたフランスは力なく笑う。
まるで堪えきれない痛みを、溢れ出しそうな想いを、どうにかやり込めようとするかのように。
イギリスの小振りな頭を抱き寄せて、昔から変わらない固くくすんだ金糸に、顔を埋めた。

「俺は…好きでもない奴、何百年も抱いたりしないよ」

ねぇ、アーサー。
言ってフランスは、目を閉じる。
関係を壊してしまいかねない一言だ。それすら覚悟で、フランスは言った。言わなければ壊れてしまうと思った。
それほどに、痛かった。なのに。
なのに、イギリスはフランスの腕を無理矢理に引きはがす。そして。

「Don't talk rubbish,fucker」

泣きそうな笑顔で、そう言った。




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最後の眉毛の台詞は「寝言は寝て言え、くそばか野郎」みたいな感じです。元ヤンこわい(;゜ω゜)




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