大丈夫。痛くない。
言った顔は、泣きそうに歪んでいた。

ぷるぷる震える拳が振り上げられる瞬間、フランスは思わずイギリスを抱きしめてしまっていた。
いつだって意地っ張りなイギリスはフランスのその温かい腕から逃れようともがくが、愚図る子供の癇癪では、力強い束縛を解くことは出来ない。

「う……ッ」

押し殺した嗚咽がイギリスの口から漏れて、フランスは唇を噛んだ。
ごめん。ごめんね。フランスはイギリスの肩に顔を埋めて、呟く。
まるで全身を切り裂かれるかのような痛みを乗せたその小さな謝罪は、イギリスの些細な抵抗さえも無力化してしまう。

「…アート、ごめん」

ごめんね。
言ったフランスは、より一層強くイギリスを抱きしめる。
それが単なるエゴであることくらい、フランスにもわかっていた。痛くない。笑ったイギリスにだって、それはきっと。
仕方ない。仕方ないんだよ。そう、自らに言い聞かせて、フランスは懐に手を入れた。
かしゃり、イギリスの額に冷たい塊を宛がう。続いて、自分にも同じ質量を持ったものが当てられる。黒い、それは、銃。

「ごめんね。ごめんね、アート」

引き金に指を引っかけながら、フランスはにっこりと微笑んだ。

「愛して、ごめん」






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