好き者だね、坊ちゃんは。フランシスが呆れたように呟いたから、お互い様だろ、とアーサーは笑ってしまった。カランと、溶けかけた氷が寂しそうにグラスの中で不満を言った。
熱い熱い指先が臍の、そのまた下を撫でたから、アーサーは「ん、」と妙に甘えた声を上げた。もう夏と呼んでも差し支えのない時期、しかして晒された肌はぶつぶつと粟立っていて、それに気づいたフランシスは下品に笑って見せる。
「…可愛くて淫蕩な、俺の坊ちゃん」
感じやすいね、ほんと。
言ったフランシスはアーサーの緩く勃ち上がる自身にゆるりと、そのうつくしい指を這わせた。フランス様式の子育て法が間違っていたのか、それともそれを実践する側に問題があったのか、快楽にどこまでも貪欲で従順な愛らしいフランシスの恋人は、舌っ足らずないやらしい声で鳴きながら、フランシスの頭に縋り付く。さらさらと指の間を流れる金糸を名残惜しそうに弄びながら、アーサーはびくりと太股を震わせた。
「ふ、ぁ、や…んぁっ…」
ふるふると、無意識に首を振りながら煌びやかな快楽を享受する様は壮絶に淫らで、フランシスはごくりと喉が鳴るのを止められなかった。
流石、エロ大使だけあるわ。熱い息が燻った胸の奥でぽつり呟いて、フランシスはもうすっかりアーサーの先走りで濡れてしまった指を、アーサーの後孔に押し入れた。受け入れ慣れたそこは切れることなど到底なく、むしろ愛おしい人の指を歓迎するかのように内壁が震える。それはもしかしたら、歓喜の震えだったかもしれない。
フランシスは、多分本人にも分かっていないことを分かったように、にんまりと口角を上げて、ゆっくりとアーサーの秘められた箇所を広げていく。先に焦れて声を上げたのは、アーサーの方だった。
「あ、やぁ…っ、ん、フラ、…ン…っ!」
もう三本に増えてしまった指をぎゅうぎゅうに締め付けながら、アーサーはフランシスの首に手を回す。自分の口元までフランシスの頭を引き寄せて、アーサーはぼそりと、何事か呟いた。
「… 」
なぁ、フラン、良いだろ?
脳に直接吹き込まれた言葉に、フランシスはらしくなく赤面した。あーもうお前なぁ。情けない声で呟いて無駄だと気づいたのか、淫乱な恋人に自称愛の国は白旗を上げる。
「ほんともう、」
お兄さんの負けだよ。
臆面もなくそう言ってのけて、フランシスは既に存在を主張して止まない自身をアーサーの秘部に擦り付けた。
でもね、アーティ。フランシスは言って、アーサーの中に勢いよく自慢の息子を突き入れる。アーサーの背中が綺麗な弧を描いて、鮮やかな嬌声がいつも皮肉ばかり紡がれるその口から、零れ落ちた。
「お兄さん、負けっぱなしは嫌いなんだよね」
だって、悔しいじゃない。
言って、フランシスは愛すべきエロ大国に、果たし状を突き付けた。