( ――…何も、これが初めてって訳じゃねぇんだ )

かつて身体を重ねた中には、救いようのないヘタクソや自分を世界で一番偉いんだと思ってるバカ。そんなのはザラで、酷い時には前戯もなしに突っ込まれたりとか、ままあった。
それに比べたらマシな方だ多分。
思って、イギリスは目を閉じた。
男の気持ちは男が一番分かっているっていう、ただそれだけの話。

先日、フランスの愛していた女性が、天に召された。
そういうと聞こえは良いかも知れないが、実際一人の少女が死んだという残酷な現実を体現している。
いや、少女は"死んだ"のではなく正しく"殺された"。

イギリスの手で。

その最期は本当に酷いもので、泣き叫ぶ少女を火刑に処し、煙で窒息死した後に火を一旦遠ざけ、その性器を晒す。
(魔女は両性具有者だという)
そして灰になるまで少女の身体を燃やした後は、セーヌ川に流し、宗教的な観念からも絶望を与えた。絶望を与えるべき相手は、もう既に死んでいるというのに。
それは異端狩りでも最高の刑。
上司の命令なのに本気で逆らいたくなったのは、今回が初めてだった。
だけど、そんな言い訳が通用しないことくらい、イギリスは分かっている。だから言わない。
"ほんとは俺だってあんなことしたくなかった!!"

厳しい警備を掻い潜り、彼女の処刑される始終を見ていたフランスに、イギリスが言ったのは一言。「見てたのか」。
骨の髄まで、それこそ徹底的に紳士であるイギリスが隠した本音に、フランスは果たして気付いたかどうか。

「ただの、女の子だったんだ…ッ」

ボトリ、フランスから落ちた雫が押し倒されたイギリスの頬を濡らした。
愛していた少女を殺されてもどこか優しさの抜けきらないフランスは、こんな状況でも前戯は忘れなかった。ただ、それだけだが。
フランスの抱き方はいつもと違って乱暴、粗暴、そのもので、テクニックの欠片もない愛撫(と称するのにも気が引ける)をイギリスに施すだけ。
イギリスはだから、感じているフリをした。
イギリスを浅ましいと蔑むことで、フランスが少しでも楽になれるなら、それはそれで良かった。
元より落ちた自分の身体をまた貶めることに、何の躊躇いもないのだと、イギリスはぼんやり思う。
フランスは、保身の為に自分を抱いている。それならばそれで。
彼を愛し、彼が愛した少女の代わりに、せめて腹癒せにでもなれば。

イギリスはそれで良かった。


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