ああもうこれで一体何度目だろうか、とフランスは肩を竦めた。ぴくり、引き攣った口元が溜め息を吐き出すまで、あと何秒?
お前なんかだいっきらいだ!なんて、お決まりの台詞を物凄い勢いで投げつけられたから、フランスは唇をにんまりと歪めた。ああ、知ってるよ、坊ちゃん。
「意地っ張りな坊ちゃんの嫌いは、」
好きって意味だもんね。
言ったフランスはよしよしとイギリスの頭を撫でながら、目尻いっぱいに溜まった塩辛い雫を舐め上げた。あは、しょっぱい。そう笑ったフランスに、"意地っ張りな"イギリスから飛んできたのは、当然謝罪でも、ましてや感謝でもなく、堅く握られた拳。
「ッたぁ」
何すんのさ、坊ちゃん。
殴られた頬を押さえながら訴えたフランスは、溜め息を吐く。イギリスと付き合い始めてから、一体これは何度目の溜め息だろうか。数えるのにも疲れてフランスは肩を落とした。
「おおおお前が悪いんだからな!!」
顔を赤く染めたイギリスの拳はわなわなと震えていて、フランスは「あらまぁ」とほくそ笑んだ。
この坊ちゃんは、本当にわかりやすいよね。
思ってフランスは、イギリスを抱きしめる。
「あのねぇ、坊ちゃん」
それ、誘ってるとしか思えないから。
フランスはイギリスの前髪をかき上げて、さらけ出された額に軽くキスを施した。
ねぇ、愛してるよ、坊ちゃん。
聞き慣れた声が耳を擽って、イギリスはふるり身を震わせた。
フランスが触れたところから火がついたように熱くなって、溶けていってしまう。イギリスはそう、思った。
「…フラ、ン、シス」
溢れる想いをなんとか言葉にしようと、イギリスはフランスの名を呼ぶ。
多分それは、愛してるという想いを代弁する為に。
どくんどくん、うるさい心臓が鳴り止むことを願うのは些か勝手が過ぎると思ったから、イギリスは真っ赤な顔を俯かせた。