愛だと呼ぶには、あまりにぶっ壊れた感情だよ。

抱きしめる。キスする。どちらも今の状況には似つかわしくない気がして、フランスは肩を竦めた。ひどくもどかしくて、胸の辺りがもやもやする。
吐き出すところが見つからず、フランスはみっともなくしゃがみ込んだ。落ちた溜め息の意味は、果たして目の前の愛おしい存在に届いただろうか。

「フランス?」

どうしたんだよ。いきなり。
言われて顔を上げれば、珍しく心配そうな恋人の顔。フランスはにんまりと口を歪める。
素直ではないこの恋人は、泣きたい時に笑い、嬉しい時に怒った顔をするのだから、こうしてそのまま素の表情が見られることは、滅多にない。そこが可愛いと言ってしまえばそれまでなのだが、それでもフランスもれっきとした男――を象った国なのである。たまには素直な反応だって見たい。
そう。フランスが日常的に贈る愛の言葉に、せめて、嬉しそうな顔をしてくれたら。
フランスは思って、自分に目線を合わせるように座り込んだイギリスの頬に手を当てた。

「ねぇ、坊ちゃん」

愛してる。
言ったフランスはじぃと恋人、イギリスの目を見つめた。いつもならこのまま有無を言わせずキスの一つでも噛ますのだが、今日はいつもとは違う。ただ言いたいだけの、いつもとは。
フランスはさわり、イギリスの頬を撫でる。そうすれば、伝わる気がした。言葉にするより明確な『愛してる』。

「……フランス」

フランスの意図が伝わったのか否か、顔を真っ赤に染めたイギリスは、唇を噛んで俯いてしまった。握った拳が膝の上でぶるぶる震えていたから、フランスは苦笑をする。
フランスは立ち上がって、随分と低い位置にあるイギリスの頭を撫でた。無理しないでいいよ。そう言って。

「……まっ、」

踵を返しかけたフランスの裾を、掴んだのは、素直じゃない筈の恋人の指。ひどく弱々しい力で、それでも離さないという風にぶるぶると震えるから、フランスはイギリスと目線をまた合わせる為にしゃがんであげた。どうしたの?軽く首を傾げたフランスの唇に、かさついた唇が当てられた。

「ッ」
「………あいし、てる」

フラン。
言ったイギリスはもう限界と言うように顔を伏せる。耳まで真っ赤になり、顔から湯気でも出てしまいそうなイギリスを見て、フランスは笑ってしまった。
ほんとに可愛い、俺のモン・ラパン。
言ったフランスはイギリスの前髪をゆるり掻き上げて、晒された額に啄むようなキスをした。




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