何となく。本当に何となくフランスの家を訪ねたら、その家の持ち主はとても悲しそうな顔をしていた。
その頃のイギリスはどうもそういう機微に疎かったものだが(今もあまり鋭いとは言えない)、それだけは何故か分かってしまった。フランスがとても悲しそうな顔で微笑んでいることだけは。

「なぁ、」

フランシス。
イギリスは確認するようにフランスの名を呼ぶ。首を傾げているフランスは、世界に少しも痛みなんてないという風に微笑んでいるから、イギリスは眉を寄せた。
そんな仮面、要らないのに、と。

「…笑うなよ」

イギリスは苛つきに任せてフランスの胸倉を掴む。何が?意味分からないよ坊ちゃん。言ったフランスの、その意地が酷く鬱陶しくてイギリスはフランスの困惑の言葉を紡ぐ唇に、キスを仕掛けた。

「何で俺の前でまで作り笑いしてんだよ、ばかぁ!」

言ったイギリスは自分とさほど変わらない高さであるフランスの頭を抱き寄せる。良い匂いがする髪の毛をくしゃり掻き混ぜて、イギリスはフランスの背中をあやすように撫でてやった。

「あーもう」

ほんと、敵わないよ、坊ちゃん。
途切れた吐息の合間に落ちてきたフランスの声にイギリスは「ばぁか」と笑って。
のりの効いたシャツが湿って濡れていくのを感じながら、自らもぽたり、涙を流した。

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