殴って、蹴って。
相手を殺そうと躍起になって、それでも最後には、必ず握手をする。

また俺の勝ちだったな、とイギリスが得意げに宣うから、うるさいよ、と言ってフランスは苦々しく溜め息をついた。まだ真新しい怪我は生々しく存在を主張していて、喋るのも億劫な様子のフランスにイギリスはにんまりと唇を歪めた。
尤も、イギリスとて怪我をしていない訳ではない。どころか、ともするとフランスと同等くらいの傷が、禁欲的に一番上まで止められたボタンの間を縫って見え隠れする。

「もうほんと、」

これで何回目だろうねぇ。言ったフランスはもう、苦笑を浮かべている。
いけ好かない隣国の称号を互いに授与してから、二人はよく喧嘩をした。短ければ1分、長ければ100年と続くそれは、それでも二人に決定的な溝を築くには至らない。今度こそぶっ潰してやる!毎度宣言されるその心意気に決して嘘はないのに。

「お前は何回負けたら気が済むんだろうな?」

楽しそうに言うイギリスが憎たらしくて、フランスはイギリスの頬に走る一本の切り傷を、突然べろりと舐めた。

「ベッドの上じゃ俺に勝てたことない癖に」

見事に固まったイギリスに、フランスはうっとりと笑う。
その恐ろしいほど整った笑みを受け、イギリスの顔が真っ赤に染まった。

「っ、ばかぁ!」

涙目で咄嗟に振り上げられた拳を、フランスはいとも容易く受け止める。ぱしん、と軽い音が鳴って、時間が、世界が、静止した。
フランスはふんわりと優しい手つきでイギリスの髪を撫でて、受け止めた拳を開かせる。その手に「ほら、」と自分の手を握らせて、イギリスの唇にまるで子供がするような軽いキスを贈った。

「仲直り」

また、次の別離まで、仲良くしよう?
言ったフランスに、イギリスは「仕方ねぇな」とお決まりの文句を吐いた。




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