びくりと顔をしかめたから。
それが、証。

昔からイギリスは生傷の絶えない国だった。ベッドに組み敷いた傷だらけの肢体を見て、フランスは溜め息をついた。擦り傷、切り傷、フランスの下で喘ぐ、青や黄色に変わった肌がぴくぴくと蠢く。

「…今回は何があったの?」

お兄さんに話してご覧?
ぷくり柔らかな唇が、頬に出来た赤い線をなぞる。それにイギリスは「う、」と眉を寄せて、フランスを睨んだ。

「かんけ、ねぇ、だろばかぁ!」

それより離せ、とイギリスは身を捩るが、フランスの腕はびくともしない。いつも美やら愛やらを追求して、喧嘩には負けっ放しでいるフランスのどこにこんな力があったのだろうと、イギリスは内心舌打ちをする。
関係ないってことはないでしょ、とフランスはイギリスを組み敷いたままで、器用に肩を竦めた。

「…お兄さんは、心配なんだよ」

声のトーンが下がって、突然真顔になったフランスに、イギリスは溜め息を吐く。それはどこか呆れの色を孕んでいて、フランスはどこかムッとした表情になった。心配してるのに、と。
そんなフランスの表情に、イギリスは笑う。馬鹿だなぁ、こいつ。とでも言いたげな笑み。

「…大丈夫だから」

俺はそんなに柔じゃねぇよ。
言ってイギリスは、フランスに口付ける。触れるだけの、まるで子供が親にするような幼いキスだったが、フランスにはそれで充分だろうとイギリスは踏んだのだ。

「あーもう」

辛くなったら言いなよ?
かしかしと頭を掻いて、フランスはイギリスを抱きしめた。心配なんだよ。言ったフランスの腕は、震えている。

「…この過保護野郎」
「何て言われてもやめないよ」

好きなんだ。耳元で囁かれて、イギリスの頬に火が灯った。その熱い頬にキス一つ贈って、フランスはにやりと笑う。

「お兄さん久しぶりに頑張っちゃおうかなー」
「ば、ばかぁ!」


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