ぴりり、痛む。
ぎりり、傷む

嫌いだ、と呟いて、イギリスは唇を強く噛んだ。
俺は、お前が、大っ嫌いだ。
恨むような、憎むような、あるいは焦がれるような目でフランスを見て、イギリスは言う。

「お前なんか、俺はこれっぽっちも愛してない」

愛してないんだ。
まるで自分に言い聞かせるみたいににそう言って、イギリスは一瞬だけ目を泳がせた。先程から、心なしか息が荒い。
がっちがちに固まった矜持が、喉を塞いでいる。それは多分、錯覚などではない。

「そう」

はくはくと喘いでいるイギリスの耳に届いたのは、予想外に簡潔な答えだった。
そう。なら、仕方ないね。
綺麗に微笑んだフランスが、イギリスの頬に触れた。
それだけでカァッと身体が熱くなる。溶けて、しまいそうだ。イギリスは無意識に一歩フランスから遠ざかる。
どこにあるかもわからない心がじりじり、焦げる。
ねぇ、イギリス。

「お前がいくら俺のことを嫌いでもね」

俺はお前のこと、ずっと愛してるから。
フランスは言って、イギリスの唇の端に触れる。その手付きがまるで、本当に愛されてるみたいに、本当に愛してほしいみたいに感じさせるから、イギリスは大っ嫌いだった。
フランスの手も、目も、髪も、体温でさえ。イギリスが築いてきた周囲との壁を、いとも容易く壊してしまう。
きらいだ、とイギリスはもう一度呟いた。
きらいだ。俺を俺じゃなくさせるお前なんて、嫌いだ。
なのに、とイギリスは言う。

「何でこんなにも、俺はお前が好きなんだ…っ」

それは告白のようで、吐露のようで。
そして、愛情の発露のようであった。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -