「で、」
なんで別れたんやっけ?
問われて、フランスは疲れたように笑った。そんなこと、聞かなくてもわかる癖に。そう言いたげに肩を竦めて。
決まってるじゃないか、そんなの。
「好きだったから、愛してたから」
だから、別れた。
スペインの知る限り、イギリスと別れてから、フランスは一度も涙など見せなかった。だけどそれはフランスが傷ついている時の証拠だと、所謂古馴染みであるところのスペインはよく知っている。
あまり知られていないが、面倒臭いやつなのだ。それこそ、フランスの隣にいたいけ好かない眉毛に匹敵するくらいには。
ふうん、と、口先では興味のない風に返事をして、スペインはコーヒーを啜る。本当に興味がなければ、わざわざこんな所まできていないのだけれど。スペインには、そういうポーズが必要だった。ただそれだけのことだ。
で?
「これから、どうすんの?」
明日の予定でも聞くような、そんな軽い問いかけに、フランスは軽く嘆息する。相変わらず明け透けに物を言うやつだ。
スペインのそういった自由気ままな態度は、フランスにとって決して不快なものではない。それどころか、心地よさすら感じてしまう。
長い付き合いだ。スペインがフランスをよく知っているように、フランスだってスペインをよく知っている。ただそれだけのこと。
フランスは頬杖をつく。そして緩やかに首を振った。
「どうしよう」
フランスはスペインに問う。
これからどうするかなんて、これまで考えもしなかった。
今のフランスの心のように、あるいは求めて止まないかの国のように、どんより重たく曇った空の下、それはまるで縋るように響いた。
ほんなら、とスペインは言う。
「俺に、しとけへん?」
まるで興味のないような、退屈そうな表情で言って、スペインはフランスの髪を撫でる。
さらさらと流れるそれで散々遊んでから、スペインはふわりと笑った。
「…冗談やん」
なんちゅう顔しとんの。
あやすようにぽんぽんとフランスの頭を軽く叩いて、スペインは、くるりフランスに背を向けた。
「でも、あんまりうじうじしてたら、どうなるかわからんで」
だからはやく仲直りしぃ。昼飯ごちそーさん。
言って、スペインはひらひらと手を振った。スペインが今どんな表情をしているのか、フランスには到底想像できなかった。