熱望
ぷは、とようやく唇が離れたとき、スバルくんはわたしを見てくすくす笑った。
「あんずが真っ赤になっちゃった」
「……な、長いから」
「ごめんごめん! 久しぶりに二人っきりになれたから嬉しくってさ〜」
口の周りを濡らした二人ぶんの唾液がひんやりする。けれどそれを舐めとるのは、もっと恥ずかしいような気がした。
こんなに長く、深くキスをするのは、初めてだったから。
ぎゅうぎゅう抱きしめたり、つんつん突いてみたり。ひととおり無邪気にわたしを弄んでから、スバルくんは最終的にベッドの上に座り、自分の膝の間にわたしを収めた。彼の両腕で後ろから抱きしめられる形で、逃げられないように緩く拘束されている。
耳元に甘い囁き。
「ね、今日はさ、一緒に寝ようよ」
脳が痺れてくらりとする。
このまま二人で倒れ込んで、朝までどんなことをされてしまうのだろう。明日、起きられるかな。痛いかな。気持ちいい、かな。
「今日は寒いし、あんずを抱っこして寝たい〜。変なことしないからさ、お願い!」
「……抱っこ」
思わずため息がこぼれた。
「えっ、もしかしてダメ?」
「いや、だめではないんだけど……てっきりそういう意味かと……」
「なになに、もしかして期待してたの? あんずのエッチ〜!」
からかうような彼の言葉に、普段なら否定して、それで終わりだったけれど。
今日のわたしはたまたま少し値の張る下着を着ていて、たまたまホテルの布団が薄くて寒くて、たまたまそういう気分だったから。
「……うん」
迂闊を後悔したときには遅かった。でもそれは、間違いなくわたしの意思だった。
わたしのお腹のあたりで組まれたスバルくんの両手がぎゅうっと引き寄せられて、後ろからまた囁かれる。
「……あんずのえっち」
ああ、もう逃げられない。
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