この中に一人、彼氏がいる!

1.大道具担当者の話

 あんずさんの彼氏? もちろん氷鷹さんでしょ。
 隠してるんだろうけどバレバレだよ〜! あんずさんは結構上手くやってるけどさ、氷鷹さんって意外と嘘とかつけないタイプじゃん?
 この前も、体調不良で現場に来られなくなったアイドルの穴埋めであんずさんが氷鷹さんを呼んだんだけどさ。申し訳なさそうにペコペコしてるあんずさんに氷鷹さん、なんて言ったと思う?

「そんなに謝らないでくれ、俺は嬉しいんだ。大切なお前が困った時、一番に俺のことを頼って、声を掛けてくれたんだからな」

 だってさ〜! あのときの氷鷹さんの目、あれは友達とか仕事仲間に向けるもんじゃなかったよ!
 ていうか普段からも、『女神』とか『世界一大切な女性』とか堂々と言ってるし、あんずさんへの感情が全然抑えられてないんだよなぁ……。
 間違いなく、あんずさんは氷鷹さんと付き合ってる!

☆☆☆☆☆

2.アシスタントカメラマンの話

 いやいや、俺は遊木さんと付き合ってるんだと思うよ。
 俺、モデルの現場であの人とよく一緒になるからわかるんだよ。トリスタでは三枚目キャラみたいに売ってるけどさ、あの人ああ見えてかなり冷静で演技も上手いし、だから誰にもバレてないだけ。
 この前あんずさんが撮影現場に差し入れ持ってきてくれたんだけど、……ああ、忙しいのにそんなことまでしてくれるんだよ。良い人だよなあ。
 じゃなくて、そうそう。みんなから離れたところでさ、こっそり二人で話してたんだよ。

「また隈ができてるよ、最近働きすぎじゃない? お休みはちゃんと取ってね。僕に、もっときみのこと大事にさせて」

 ってさ。上手いよなあ。自分のために休んで欲しいって言われたら、あんずさんは断れないもん。
 あのさりげない気遣い、やっぱ彼氏だからこそよく見てるんだと思うよ。絶対、あんずさんの彼氏は遊木さん!

☆☆☆☆☆

3.ヘアメイク担当者の話

 わかってない、あんたら何にもわかってない! あんずさんの彼氏なんて衣更さんに決まってんでしょ?!
 この前、あんずさんが転んで階段から落ちそうになっちゃってさ。そしたら隣にいた衣更さんがサッとあんずさんの手ぇ引いて助けて、それだけでもすっごくカッコいいのに、あの……ほら! 先月クランクアップした、少女マンガ原作の映画の役のときの! あんな感じの、ふにゃっとした笑い方でさ。

「良かった〜。気をつけろよ〜、お前にもしもの事があったら俺、一生立ち直れないからさ。なんなら手ぇ繋いで歩こうか?」

 だって! これもう少女マンガ? もしかして撮影中? ってドキドキしちゃった! さすがはトリスタのガチ恋製造機だよね〜!
 衣更さん、女性のファンにも共演者にも優しいけどさ、頭撫でたりとかはあんずさんにしかやってないんだよね。どう見ても特別扱いでしょ!
 いくらあんずさんでも、あんなふうに衣更さんに優しくされたらイチコロだって。絶対、あんずさんは衣更さんと付き合ってる!

☆☆☆☆☆

4.P機関職員の話

 いや、絶対明星さんだよ……。
 うん、わかる、わかるよ。明星さんって誰よりもあんずさんと距離近いけど、犬?みたいな感じあるし、確かに彼氏彼女みたいには見えないよな。
 でも俺、さっきたまたま非常階段で二人が喋ってるの聞いちゃったんだよ。

「今夜、晩ご飯何にしよっか?」
「鍋とかいいんじゃないかな?待ち合わせて、スーパー寄ってから帰ろうか」

 って。これ同じ家に帰る予定ってことだよな?
 さすがに男女が二人、同じ家に帰るのに何も無いってことはないだろ。
 なんか、ショックと微笑ましさが半々だな〜っ。俺、二人が高校生だった時から知ってるからさぁ。勝手に親戚の子どもみたいに思っちゃってたし。
 そりゃあ、世間からは職業柄いろいろ言われるかもしれないけど。
 でもやっぱり、俺はあの子たちが好きだからさ、二人には幸せになってほしいなぁって思うよ。

☆☆☆☆☆

5.その夜

「第20回くらい、Trickstar鍋パを始めるよ!!!」
「「「「「かんぱ〜い!」」」」」
「まあ10回超えたあたりから回数はあやふやだよね、明星くんのお家でやるのは久々だけど!」
「ピザパも20回くらいやったし、タコパは30回くらいか〜? いくらなんでも年中集まりすぎてんな、俺たち」
「あんず、白菜ばかりでなく肉も食べろ。最近また痩せてきているぞ、お前はもう少し体に脂肪をつけた方がいい」
「ホッケ〜がオッちゃんみたいなこと言い始めたよ。あとそれセクハラだから〜! あんずから離れろ〜!」
「そう言いながらきみはあんずちゃんの隣に陣取るんだね、明星くん……!」
「この部屋暑いしあんまりぎゅうぎゅう抱きついてやるなよ? あと、あんずは酒弱いんだから飲みすぎないようにな〜」

 明星くんの重みを感じながら、幸せの重さだなぁ、とか思ってしまう。
 重いのも、暑いのも、騒がしいのも、美味しいのも。今この時感じるもの全て、大好きなあなたたちと共有する全てが、わたしにとっての幸せだ。
 目が回るほどに、幸せだ。

「うう……目が、回る……」
「あっ、もうこんなに飲んでる! 言わんこっちゃない!」

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