愛してくれた彼

「なぁ、友」
静かな空間の響く彼の声
鋭いが優しい声色
俺の好きな声

「知ってっか?俺の血縁にはここの風紀委員長をしてた人がいるってことを」
驚いた
何故いきなりそんなことを言うのかも
何故俺に言うのかも

「そいつはな。ある1人の人を愛していた。」
身を任せてしまうような穏やかな音色
けど彼の発言は決して穏やかなものではない
今の俺はさぞや目を見開き驚いている顔をしているだろう

クスッと笑い里見は続けた
「けど愚かなそいつは愛してた人が苦しんでた時に見捨ててしまった。彼は悔いた。何度も何度も彼にすがりつき謝ろうと、仲を取り戻そうと、愛してると伝えたかった。やっとの思いで出会ったのは彼の結婚式。幸せそうなそいつの顔にその男は今度こそ絶望した。もう愛せない。愛することも出来ない。そばに立つことも、下につくことさえ許されないと思うような境界線」
……しってる
ひさしぶりに出会ったあいつの顔は歪んでいて辛そうで、だけどその時の俺は何も出来なかった。否、することが出来なかった。
痛いほどにわかる…その気持ち

「あいつが幸せそうな顔を見る度に醜い嫉妬にかられたがそいつは親愛ではあったが好きになれた女がいた。彼を理解し彼を支えてくれた。一番ではなかったが確かに愛してた人。そいつと結婚し、やつが幸せなら影で見守ろうと少なくとも彼に害をもたらすものは自分が抹殺しようとした」
それが彼なりの償いだった

確かに無駄に反感をくらったことは無かったな
あいつがやってくれていたのか。
…そしてあいつも支えてくれた人が居たんだ。確かに奴のそれらしき結婚式の招待状も渡されたが生憎と出産ピークで俺は辞退したのを覚えている
ある意味良かったと思ってた
あいつの顔を見て素直に“おめでとう”をいえる自信がなかった。幸せなムードをぶち壊すぐらいなら俺は身を引いて影から祈ろうと思った

「彼は死ぬとき神に誓った。生まれ変われるならば俺にあいつを愛させてくれ。最後のチャンスをくれ。裏切りはしない。あいつだけを見てあいつだけを感じて生きる。あいつと今度こそ隣で2人で幸せに暮らしていこうと」

……まて
何故お前はそこまで詳しく話が出来る
例え里見がアイツに教えられていたとしてもそれこそ幼児園のような幼い頃だ。何せ曾孫なのだから。そんな幼い子供にそこまで覚えることは不可能
ならば何故?



俺にはわかっていた
ある一つの可能性が

わかってしまった
何故俺にそんなことを言ったのか


こいつは……

やつと“似ている”君は……


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