◆BLNLaphのとこにある絵空事と御心に逆らうの大元です。一応ドーヴァーだったんです。
文の書き方がアイタタタなのでご注意下さい。もう見返したくない…





【アーサーside】


ふと我に返った。


痛い。
苦しい。
疲れた。

誰か助けて。

もう戦いは嫌だ。



でも誰も助けてなんてくれはしない。

自分の事で精一杯。

伸ばされた救いの手は裏切りの手。


もう、嫌だ。


科学が進歩していくら戦争の形が変わっても、流れる血は国民の血だ。


それに痛さは前より一層増した。





セルビアの野郎の馬鹿。

なんでオーストリアの皇子を暗殺なんてしたんだ。
するなとは言えねえがやるなら完璧にやれ。バレてちゃ意味ねぇだろ。
犯人捕まってサラエボ事件なんて名前付けられるようなら始めっからすんな。



オーストリアの野郎の馬鹿。

皇子暗殺されるほど薄い警備なら文句言うな。
第一お前がやり始めたくせに金が勿体ねえから止めるなんてふざけんな。




柵だらけのオレはこの無責任なヤツらの戦争に手を出した。それはもう世界からみたら、シナリオなんてはっきり誰かの意図で組み込まれたものが必要無いほど、当たり前なことだった。



嫌気がさした。
だから何時もの勢いもない。手を抜いてた。自分は指示を出して他国にどうにかさせる。
アメリカが食糧を提供してくれる、と聞いたとき。オレは、まだ戦わなきゃならないのか、と思った。



【フランシスside】


イギリスの様子がおかしい。
アーサーの、と言うべきか。
いつもなら最前線に立つアイツが戦場に出向いてもいない。


(今の所、気付いてるのはオレだけみたい。)

最初はなにか企んでいるのかと思ったけど、同盟国会議で直接会ってその可能性は捨てた。



コイツは――…



オレはアーサーを国境境(さかい)の街に呼び出した。




【アーサーside】


この当時フランスと友好の方で同盟を結んでいたオレは、フランシスに呼び出されて国境境の街にいた。

古ぼけた店のドアを開ければ酒の匂い。
フランシスはカウンターの壁際の一番端の席という客の少ない一帯の更に隅に座っていた。と言っても、戦争中だから客はもともと少ないのだが。


「アーサー、こっち。」


座ると同時にバーデンダーに出されたのは酒ではなくブドウジュースだった。
気落ちしたのは仕方がないということにして欲しい。


「急に呼び出してなんだよ。」

「まあ急ぐなって。」

「……同盟破棄なら上司に言ってくれ。」

「んー、同盟破棄じゃないんだな」


コレが、と苦笑いをしながらブドウジュースに口をつけるフランシスに少しいらっとした。


「じゃあなんだよ。援助要請か?食糧ならおまえのところにもアルフレッドが提供してただろ。金はうちもない。兵ならまあまあだな。」

「………ねえアーティ、」

「アーティって言うな…!!」


取り計らったように店内の灯りが消えた。
そしてオレはフランシスの腕の中にすっぽりと収められた。

昔、オレが小さかった頃に抱っこされてたのと似た感覚。


「そんな顔しないで」

「!!はなっせっ」


至極近い距離、しかも耳元で話すアイツの腕から逃れようと、必死にもがいた。けれど、一層抱き締められた。


(クソッ暗くて……)


視覚が弱まり余計なものまで拾ってしまう耳が恨めしいと感じた。



「アーティ、本当はもう戦いたくないんでしょ?」

「なっ?!」


本音を見透かされて、心臓が跳ねた。


「もう戦わなくていいように、オレがどうにかするから。アーティは無理しないで」

「っ……」

「オレが、守るからね。」

「……でもっ」

「Ne vous inquietez pas」


それははるか昔に聞いた、美しい響きの言葉で。
小さかった俺はその美しさを紡ぎ出す喉が好きだった。



「………」



俺が返事をせずに(正しくは返せずに)沈黙し俯いていると、フランシスが不意に俺に回していた腕をほどきすっと離れて、店内に灯りが戻った。

フランシスは漠然とするオレをおいて席を立ち代金をマスターに渡して店をでた。


「もう、戦わなくて、いいのか……」


いつものオレならそんな戯言に感化されないのに、心には漠然とそれだけが残った。





それから二週間。

1日1日戦況が変わるのが戦争だ。
そんな中で、他の奴らのオレに対する依存が少しずつ和らいでいった。
大きな変化と言えば「イギリス」から出してる傭兵を電話一本で打ち切れたことだ。――以前はその話を責任者に繋ぐのに2日、それから話し合いで最低3日は要したのに。
戦争は刻々と進んでいるのに応援要請もなければ加盟申請もない。
戦争によるそれなりの不景気はきたけれど、大した打撃では無かった。


「‥‥‥‥暇だ。」


イギリスが楽できるのは、全部全部フランスのおかげ。
それだけが少し癪だけど、いつもより心持ち重く曇った空の下で大好きな紅茶の香りを楽しみながら妖精さんたちと戯れているとどうでもよくなってくる。



『ねぇ、アーサー』

「んー、どうした?お前も紅茶飲むか?」

『フランシスにお礼を言いに行かないの?』


急に現実に引き戻されてしまった。
オレは礼を言うのが苦手だ。正直それは避けたい。



「………ああ。」

『……彼は、少なからず苦労してるわよ』


それは、痛いほど分かっているつもりだった。


「……アイツが言い出して勝手にした事だから、いいんだよ」


ああ、なぜこの口はこんなにも…


『フランシスがやらなかったらイギリスは隙をつかれて今頃本土で戦火が散ってたわ。』


「そんなこと、オレがさせない」


『私たち妖精が言ってることよ?貴方は知らないかもしれないけど、私たちの間ではフランシスは恩人なの。私たちの大切なこの森、この島を守ってくれたんだもの。
イギリスが言いたくないなら、私たちからのお礼を伝えて?』

『……』





『妖精は恋と悪戯と暖かい言葉が大好きなのよ』




妖精はそう言うとふとどこかへ行ってしまった。


「お礼、か……」


暫く考えてみた結果、フランスに物資と金を提供する事にした。物資には軍需品は含まず、服や嗜好品などの日用品をメインにしてみた。
言えた立場じゃないが、少しでも潤いのある生活を送って欲しいと思ったのだ。金は、好きなものを買えばいい。出来れば軍需品じゃないものに使って欲しいが、思い通りに行かない所がこの世なのは承知の上だ。


「まあ、こんなもんでいいだろ」


沢山詰まった様々な思いは字に起こす努力をしなければ形にはならない。
その努力をする気は起きなかった。



そして十数日後、フランスからオレ…アーサー宛てに金の使用明細が届いた。
9割は軍需品の名前だったが1割はオレの望んだとおりの品目が羅列してあった。

言わなくても、伝わっていた。それが少し、浮かれるほどではないけれど、嬉しかった。




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