ロクに勉強もしてないテスト前、わたしは気休めに教科書を読みながら徒歩で下校していた。
今回は友達と、睡眠学習はできるのか実験する、というなんとも馬鹿らしい理由で居眠りしまくったせいで授業の内容がさっぱりわからない。
睡眠学習の成果としては、寝入り端に聞いた話や見た内容は覚えているが、睡眠中のことは一切頭に入っては来なかったという結論に落ち着いた。
…本当に馬鹿なことをした。思わず肩を落とし空を見上げる。教科書は左手にだらしなくぶら下がっている。ため息を一つついて、此処が白昼の往来、しかも駅前で人通りもそれなりにある場所だということを思い出し、肩からずり落ちかけたスクバをしょいなおして視線を前方に向ける。
前方ではチャリに乗った少年と杖をついたおばあさんが狭い歩道で向き合い道の譲り合いをしていた。二人は少し逡巡したあと、チャリ少年が車道側、おばあさんが建物側に落ち着いたようだ。会釈する二人が微笑ましい。優しさって素敵。テスト前のストレスでささくれていた気持ちが癒された。
少し頬を弛ませて眺めているとチャリ少年が車道に倒れた。捨てられていた空のコンビニ袋でチャリ少年の前輪がスリップしたようだった。
ここは都心と小都市を結ぶ車線の多い道で、車通りが多い。チャリ少年は以外と元気で、それでも危ないからチャリを起こすのを手伝おうと駆け寄ったら、チャリ少年は突然、あろうことか車道の真ん中へ駆け出した。チャリ少年の目指す先にはDSのソフトがたくさん入ったガシャポンのカプセルが転がっている。しかし、チャリ少年のすぐ近くには大型トラックが迫っていた。大型トラックの運転手は運転席が高いからかチャリ少年に気付かず減速をしない。
やばい、そう思ってわたしは車道に飛び出してしまった。ガシャポンを拾ったチャリ少年を車道と車道の間にある植木へ全体重と勢いをかけて突き飛ばした。突き飛ばされた少年が植木へ到達したか見届ける事無くわたしがトラックに前方へハネられ、地面に叩きつけられた後同じトラックに轢かれた。暗くなる視界の中でチラリと見えた少年は上半身のみしか植木に届いておらず、車道に投げ出された細い脚が片方、有り得ない方向へ向いていた。
チャリ少年ごめん、でも片足ありゃあ生きれるよ。
視界が消えて、音が聞こえなくなって、消えゆく意識の中で、今期のテストが回避出来たことに気付き心の中で小さくガッツポーズをした。
わたしの一生は幕を閉じた。
アーユー、レディ?
ノー!!
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始まりません。何も始まりませんよ!
ただちょっと起きたら大海原とかその程度です!しかし始まりません!!
受験終わったら少し考えます。しかし始まりません。
d/b/
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