想いを寄せる女性が居たとする。自分にはその女性に告白をするときに後ろめたく思わないだけの社会的地位もあるとする。そこに十分な勇気があれば告白をするに到るのが僕の考える普通だった。だから僕はその普通を実行すべく、父の言っていた病院に時間を作っては伊千さんを探しに行った。
 ところが、ある程度の長期戦は覚悟していたが見付からないのだ。話を聞いた次の日の昼休みを利用して病院へ行ったときに、伊千さんが何科に居たのか聞いてないことに気付いた。仕方なく院内をうろうろしてみるものの、昼休みはそんなに長くない上にこの病院は生憎とホウエン一の大きさを誇る医療施設だ。偶然出会えるなんて甘かった考えは早々に諦めて、総悟案内所で伊千さんが入院患者の中に居ないかを聞くことにした。

「伊千様、ですか。失礼ですが貴方は伊千様のご身内の方でしょうか?」
「いや、違うよ」
「でしたら申し訳ないのですが、患者様のプライバシーに関することになりますので伊千様がこちらに入院してるかしてないか、また此処に通院してるかしてないかも含めてお教えすることはできません」
「…僕、デボンの次期社長なんだけど」
「存じ上げております。お父様にもご贔屓にして戴いてとても感謝しております。しかしいくら私どもの院もお世話になっているデボンの方とはいえ、患者様の情報をお教えすることはできません」
「…そうだね、悪かった」
「お役に立てなくてすみません」
「いや、いいよ。ありがとう、失礼するよ」

 結果は見事玉砕。それからは地道に院内の待合室やロビーなどを探しているがもう一週間、全くと言って良いほど見付かる気配がしない。しかも明日からはかつて無いほどにスケジュールが詰まっていてしばらくはここに来れそうもない。なんとか今日中に見付けたいところだが、結局入院しているのかそれとも通院してるだけなのかすらわからない伊千さんの姿を見ることはついに出来なかった。

 告白云々の前に、愛しいと認識してしまった伊千さんに会えないことが、僕の中で段々とストレスになっていった。


不確かよりも透けて




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4ヶ月振りの色彩更新なのに短い。

120212

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