昔、僕の家の近所にあるこぢんまりとした一軒家に、4つ年上の女性が1人で住んでいた。初めて会ったとき僕は7才だった。どうしても勉強に気が乗らなくて、家には新しく来た家政婦が1人しか居ないのをいいことに夜の裏山に繰り出した。案の定迷子になっていたところを彼女に保護されたというなんとも情けない話であるが、年相応の出会いだったと思う。
 それから僕は気の張った大人が居ない空間が気に入って、たまに彼女の家にお邪魔するようになった。いや、たまに、という頻度では大分保身的すぎた。彼女は嫌な顔一つせずに受け入れもてなしてくれるものだから、僕はどれだけ迷惑で非常識な事をしているのかにも気付かずにずいぶんと入り浸っていた。そんな懐の広い彼女は、僕が14歳になった夏のある日に忽然と姿を消してしまって、それ以来行方知れずとなってしまったけど。
 今更なぜそんな昔の事を思い出しているのかというと、さてそろそろ寝ようかという時間、つまり夜更けにいきなり僕の家に転がり込んできた酒臭いミクリとシロナとワタルが自分の恋愛観を自らの恋愛歴と共に語り出したからである。初恋がいかに実らないかからはじまり、この歳になると怖くて恋愛など出来ない、私たちは仕事に生きるのよみんなに夢を与えるのよ私たちにしか出来ないわ!というシロナの一喝でこの話題は終わった。その後はリーグ体制への愚痴へと中心がズレたので、彼らは根っからのワーカーホリックかも知れない。元から会話には参加していなかったので、ゆっくり過去のことを思い出していた。
 思えばあれが自分の初恋だったのだろう、今思い返してみると8歳の頃にはもう彼女を好いていた気がする。8歳から失踪まで6年もの間無意識に片思いをしていた自分の鈍感さに、思わず溜め息をついてしまう。

 彼女、伊千さんが居なくなってからもう7年が経った。伊千さんは今どこでどうしているのだろうか。

 アルコールが回り程良く睡魔に襲われた頭でそんなことをつらつらと考えた4日後、父の口から驚きのニュースが発せられた。
 父が定期的に受けている健康診断で懇意にしている病院で伊千さんらしき女性を見かけたらしい。


 久しぶりに、運動以外で鼓動が早まったのを感じた。


平静に衝撃




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ダイゴさん中編になる予定です。
ほとんどダイゴさんの1人語り…そしてぐだぐだ長い…申し訳ないです…

111125

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