「ここが、これから君のホームになるエクソシスト本部黒の教団で、僕は室長のコムイ・リーです。よろしくね」

「はあ…」

「こっちは科学班班長のリーバー君で、この子は僕の妹のリナリー・リー。リナリーは君と同じエクソシストなんだ。まだ幼いからいろいろと心配だけどとても良い子だから仲良くしてあげて欲しいな」

「よろしく、おねがいしま、す」

「はい、よろしくおねがいします」


わたしが入団したのは一般的には若いと言われる歳のときだけど、肉体的には成長しきってこれから衰えるのを待つ時期だった。入団した次の日、いきなりエクソシストの訓練を男性に混じってリナリーちゃんと受けろという旨を書かれた指令書を受けとった時はこの教団実はブラック会社なんじゃないかと思った。つまり信じられなかった。一日中走り回って遊ぶなど何年もしてない、女手で回せる農作業や家事ばかりをしていた体力の衰えたわたしが、成人男性と同じ訓練を。


「冗談、」

引きつった声で呟いた言葉に扉をノックする硬質な音が被った。

「伊千さんいますか?」


この声は、きっとリナリーちゃんだ。そうだ、リナリーちゃんも一緒に訓練を受けると書いてあるじゃないか、男性と訓練する場所が同じだけでメニューは別に決まってる。


「はい、今出ます」

「あ、そろそろ訓練の時間だから、服持ってきました」

「訓練着?急いで着替えるのでちょっと待っててもらえますか?まだ場所わからないんです」

「はい、ゆっくりで良いですよ」


昨日はコムイさんに隠れててお兄ちゃんっ子なんだなしか思わなかったけど、今こうしてちゃんと対面してみるとリナリーちゃんはとても可愛かった。


「すみません、お待たせしました。持って行く物とかありますか?」

「あ、特にはないです」

「じゃあ行きましょうか」

「はい。あ、あの、敬語、要らないです。あたし、年下だし…」

「でも、リナリーちゃんは入団歴すごく先輩ですから」

「っここは、あたしにとって家なので、家では敬語は無し、でしょう?」


自分よりずいぶん年下の子に上目遣いで迫られたら、誰だって陥落するのではないだろうか。しかも可愛い子に。


「っはい、わかりました。その代わりリナリーちゃんも、敬語無しでおねがいします」

「! うん!!」

「ありがとう。改めてよろしくね、リナリーちゃん?」
「こちらこそ、伊千さん!」


たしかこんな感じでリナリーちゃんと打ち解けた。リナリーちゃんにお姉ちゃんが出来たみたいとはにかみながら言われて、衝動的に手を繋いでしまったのはしょうがないと思う。修練場に着いたときの羨ましがられる目線がとても印象に残っている。


和やかな空気だったのはここまでだ。訓練のメニューはわたしの期待を裏切って男性と一緒だった。驚愕していると横でリナリーちゃんが、AKUMAは性別も歳も関係無く攻撃して来るからあたしたちは一番頑張んなくちゃ、と言って苦笑いをするものだからわたしは何も言えなかった。こんな子供が命を懸けて頑張ってるんだ、わたしがへこたれてどうする。そう思い必死で訓練を受けた。組み手は父が生前教えてくれた護身術がかなり役に立って、それを皮切りに編み物を解くかのようにいろいろ思い出してしまった。ぽとり、まさしく滝のように流れる汗に混じって涙が零れた。こんな、過去の事で泣いてる場合じゃ、ない。訓練の時間はあっという間に過ぎて、終了が言い渡されると同時にへたり込んだ自分の体力不足を痛感した。


「伊千さん、お疲れ様」

「新人お前体力無いけどなかなかやるなあ」
「あ、ありがとう、ございます、」

先輩エクソシストとファインダーの方々から掛けられる声に息切れしながらも答えて、リナリーちゃんと笑みを交わす。


「伊千さん、シャワー浴びよう」

「そうだね」


修練場の隣にあったシャワー室で汗を流していると痣やら傷やらがたくさん出来ていることに気が付いた。


「伊千さん、タオル置いとくね」

「あ、うん。ありがとう」


わたしは傷の把握を止めて早々にシャワー室を出た。





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ひとつ、ふたつと同じ夢主です。
密かにシリーズ化(笑)
ひとつ、ふたつが初めての任務で、これはその前、入団の時のです。この日はリナ嬢とずっと一緒でしたがこの後は人気者リナ嬢が科学班手伝ったりコムイさんに連れ回されたりするのでべったりするわけにも行かなくなるので独りで体力作り中心の特訓をします。なので特定の誰か、を作らないままひとつ、ふたつに入ることになります。
リナ嬢可愛い天使じゃないかこの子


111120

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