ああ、ああ、泣かないで。
 悲しいけれど、一々涙を流していては
 眼球が融けてしまうよ。

頑丈なはずの団服は擦り切れ焼け落ちてしまったので、内着の裾でこの子の涙を拭う。わたしと違ってこの子には大切なものがたくさんある。この子だけじゃない、他のエクソシストにも、ファインダーにも、科学班にも、ノアにも、わたしたちエクソシストに本当のことを何一つ告げない教団にも、大切なものが少なからずあるから、守りたいと思うから、守るために戦うのだ。
ではわたしはなんのために戦うのだろうか。家族も大切な人も友達ももう死んでしまった。死因はAKUMAではなく疫病なのでAKUMAを憎んではいない。教団に来て日の浅いわたしはまだ教団を大切だとは思えていないし一緒に戦う仲間を義務以上に思えない。とても詰まらない空っぽな人間になったものだ。
いっそのことあの白髪の少年のように生まれ落ちた時から今日までイノセンスとAKUMAと密接に生きていたならば、守りたいものも戦う理由もあっただろう。

なんて、ただの現実逃避でしか無いのだ。少女の涙を拭いながら傷付いたファインダーに応急処置を施し、残ったレベル2を倒すべく再び戦場に立つ。様々な出来事を経て築かれたこの戦場では、守りたいものがなく戦う理由がない民間人上がりのわたしでも、今ある立場が相手がわたしを消す理由になってしまうから、わたしは殺されないために戦うしか無い。死にたがりではないわたしに残された道は、死なないために戦う、これだけだ。


しかし、それは少し、寂しすぎやしないだろうか。
この長く暗い聖戦を生き抜く理由には十分だろうけど、少しばかり理由を増やしてみたくなった。守りたいものが増えすぎるとわたしはきっと自滅してしまうから、ひとつだけ。

 さあ、レベル2はもう倒したよ。
 悲しいけれど、帰ろう。
 君のお兄さんが待っているよ。

弱く頷きわたしが差し出した手を従順に握り返したこの、綺麗な涙を流す少女を、


わたしは死なない程度に守ろうと思います。




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分かり難いけどリナリー夢です。主は女性です。勢いで書き上げちゃいましたあーあ。最近いろいろ考えながら書いてたので文体気にせず書きたいことだああっと書けて楽しかったです。
先週からDグレ読み返してたんですが悲しいお話だなあと。チャン家とエプスタイン家とルベリエ家は何を抱えているのでしょうね。そこまでしてルベリエ家が頑張る理由とブックマンの過去が早く知りたいです。あと10日で12月なので23巻ひたすら待機ですね。リナ嬢好きです、いつ殉職するかわかんないエクソシストじゃなくてコムイ兄さんにしっかり守ってもらいなさいな。

111120


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