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分からないことは分かるまで追求したいがもうあまり時間がない。帰ったら乙女に聞こうと決意すると、あの晩のようにぽわ… と輝き始めた。
いよいよお別れの時がやってきたらしい。
スピカから放たれる光が球状になり、彼女を包むとふわりと浮いた。にこりと星が笑う。
『ばいばいひでよしさま。てんかとういつ?がんばってね!』
「ああ。その暁にはスピカを大阪城へ招待しよう」
『ホント?楽しみにしてるっ』
『はんべーはもっとちゃんとやすんでね!よふかしはいけないんですよっ』
「ふふふ、そうだねなるべく気を付けるようにするよ」
『ぎょうぶ、もすこしひねくれるのなおしたらいいのにー』
「これは心外シンガイ。我はちぃとも捻くれとらんて」
『うそつきー!』
ふよふよと夜空へと上っていきながらそれぞれに声をかける。悲しみや寂しさはないようでニコニコと笑みながら少しずつ空へと帰ってゆく。
別れ際に見る表情が笑顔なのは素晴らしいことだが、離れたがらないというのが僅かに淋しい。そして最後、三成へと言葉を掛ける時今までで一番の笑顔を見せてスピカは言い放った。
『みつなり!みつなりがいつかほしになったらおよめさんになってあげるね!』
「な…っ!縁起でもないことを言うなスピカ!」
『きゃーっ』
くすくすと楽しげに声を上げて笑う。星になったら、だなんて。死んだらと同義ではないか。
あぁ、だけどほんの少しではあるが死後に希望を見出してしまった。秀吉様の左腕としておいそれと死ぬつもりはないが。それでも、悪くはないと思ってしまう。
ふ、と力を抜くように口角を上げた。それに呼応するようにスピカもまた笑い。
『じゃあねみんな!またねーっ』
ぶんぶんと手を振ってそう言い終わると同時にひゅぱっと目にも止まらぬ速さでスピカは空へと帰っていった。
思った以上にあっけない別れだったが誰一人として悲しみに暮れている者は居らず。
「またね、か。次を信じているんだねスピカは」
「ああ。まったく彼奴には叶わぬ」
「太閤にそう言わしめるとは…。ヒッ、ヒヒッ」
3人が星空を見上げながらそう口にする中、三成は1人口を閉ざし一際輝く星を見つめていた。
あれがスピカだろうか。
end.
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