三成と
微睡みに意識がゆらゆらと揺れる。それの心地良さに浸りながら、朧気にそちらへと手を伸ばせば空を切って。

おや?と思い瞼をゆっくり上げると、そこにいるハズの人物はおらず。またかと、ため息を吐きたい気持ちをグッと抑えながらくるりと体を反転させた。

その視線の先には文机に向かう三成の背中。
小さな行灯の灯り一つで彼の雰囲気が柔らかく見えるのだから不思議だ。

けれどあれでは目が悪くなってしまうのでは?


三成はこうして夜も眠ることをあまりせず黙々と執務に励む傾向があった。スピカと寝食を共にすることで大分それもマシになってきたが、やはり時折こうして夜半に布団を抜け出し何やら書き仕事をしていて。

己の体温で暖かくなった布団からもぞりとスピカは起き上がった。


「…どうした」


物音にか気配にか。
振り向きもせずこちらの様子に気付いた三成は机から顔を上げることもせず声を掛け。
見ていないのに分かるなんてスゴいなぁと思う反面、なかなかにぞんざいな扱いをされている気がしてムッとする。


嫌がらせも兼ねてその背中にへばりつけば、三成の機嫌が下降していくのが分かった。


「貴様ぁ… 私の邪魔をするのならとっとと寝ろ!」

『やーっ』

「スピカ…ッ」


三成の言葉にいやいやと首を振り。自身の邪魔をされるのが大嫌いな彼はピキリと額に青筋を浮かべた。

怒られるのが分かっていても駄々をこねたり甘えたがるのが子供だと知ってはいるが…。

筆がみしりと音を立てた時、背中の温もりが消えた。かと思えば今度は膝の、胡座の上に乗ってきて。にっこりと笑ってスピカは言う。


『スピカもおてつだいしたげる!』

「…何を言っている。二度も言わせるな、さっさと…」


布団に入れと続けようとするがそれは途切れてしまった。膝の上に陣取ったスピカがじんわりと光り始めたから。

あの日、スピカが降ってきたあの夜のように淡く薄く輝いていて。暖かみを帯びる光に目を細めた。
煌々とした明かりが室内に広がる。


『どお?スピカやくにたったでしょ?』「そうだな、行灯よりかは遥かに明るい。まるで昼のようだ」

『えへへっ』


誉められたと感じたのか嬉しそうにニコニコと笑い。薄らと桃色に染まった頬をつついてやれば照れているのか、今度は三成の腹に顔を埋めた。

夜が楽しいと感じたのは久しぶりだ。


そうしてそのまま、スピカは三成の膝の上で眠ってしまったそうな。
三成の足が痺れたのは言うまでもない。

end.
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