2
笑顔で頷き去ってゆく半兵衛に元気よく手を振るスピカに、考えずとも自然と口元が緩んでしまう。
子供は策に上手く嵌らない上に理性で動かないから苦手であった。しかしスピカと接していくにつれだんだんとそれも無くなり。
結婚していればこのくらいの子供がいても可笑しくないというのもあるのだろう。人ではないとしても情が湧いて仕方なかった。
さて、頃合いを見計らって女中にお茶とお菓子を持ってくるように言わなくては。
*****
さて、それからしばらく経って。
スピカに言った通り私室にて書簡に目を通していると、何やら部屋の外―… 廊下が賑やかになってきた。
大方スピカと、それを見つけた三成だろう。予想が当たるだろうことを思って口元が緩む。ぎゃんぎゃんと何事かを言い合う2人の影が障子に掛かった。
『はんべー!スピカだよ、はいっていーいー?』
「貴様ぁ!半兵衛様に向かってその口の聞き方はなんだ!」
『もうみつなりうるさいーっ』
「な…っ!き、貴様ぁぁっ!!」
丸聞こえの会話に吹き出してしまう。
あの三成にうるさいなどと言ってのけるのはこのスピカくらいだろう。怖いもの知らずではない筈だが、いやはやその度胸には恐れ入る。
笑わせてくれた礼とばかりにスピカに助け舟を出してやった。
「いいよ、スピカ入っておいで」
『わぁいっ』
激高する三成から逃がしてやるべく部屋へ入るよう促せばスパーンッと勢いよく障子が開かれ。
礼儀作法がなってないと怒るべきなのかもしれないが、叱る人間は別にいるので自分は黙っておこう。
さて、選んでやった着物はどうなったのか。楽しみにしつつ振り返れば想定外の状況に目を丸くした。
「スピカ… かい?」
思わず確認してしまった半兵衛は決して悪くない。
何故なら障子を開けて入ってきたのは小さな布の塊で。よくよくみれば、それは羽織りだった。
それの襟部分がぱかりと開き到底日本人には見えない顔立ちの幼女が現れる。
→
[ 22/30 ][*prev] [next#]
[mokuji]