『きんぴかだー』

「ああ、鯱だな。職人に特別に作らせた物だ。」


屋根瓦を踏みしめるように出れば、まず最初に二対の金の鯱が目に飛び込んできた。
月の光によって煌々と照らされるそれは、さながら天からの贈り物かと見紛うほと神々しく。


思わず夜風の冷たさも忘れてしまった。
しかし変わらず、天に星はない。


「さて、此処まで来たがどうするつもりだ」

『んとねー ちょっとまっててっ』

「 ? 」


此処まで、ただ来たいという願いを聞いてやってきた。何を目的に来たいのかを聞かずに。

そうしていよいよ目的地に着いたのだからと聞いてみれば、肩に座ったままスピカは天へ向かって両手を突き上げ。
何をするのかと思い見ていれば淡く発光し始めた。

髪が、肌が着物が、身体全体が月と同じ… 否 星と同じ色に輝き出す。

半兵衛から話は聞いていたが目撃するのは初めてで。冷たいというよりは暖かい印象を抱いた。
自然と心が凪いでいく。


『みんなーっ!スピカはここよっ ここにいるよーっ!!』


天に空に宇宙に星に。伝えるよう教えるよう声を上げ呼び掛ける。


何をするつもりなのかは分からないが邪魔をするでもなく、ただ静かに夜空をじっと眺める。
肩では尚もスピカが己の存在を訴えていた。

夜空には今も月以外居らず。

そう思っていたのだが、一際大きく彼女が輝いた瞬間― 天空の海原にポツリと一つ宝石が浮いた。


僅かな異変に眉根を寄せればまるでそれが引き金になったかのように次々と星が生まれてゆく。
水面に広がる波紋のように、最初に生まれた星を中心として。

言葉には出来ない美しさ神々しさ、そして一抹の儚さ。
予想を超える天体の動きに目が離せない。まばたき一つすら

ほんの数瞬前までは月だけが浮かぶ果てない闇だったのに…。


今では以前と変わらず、頭上には星がキラキラと輝いている。足元に広がる城下や家臣たちが何やら騒がしくなってきた


『よし!』

「…スピカよ、何をした?」

『ん? スピカはスピカがここにいるよっていっただけよ!みんなずっとスピカのことさがしてていなかったみたい』

「そうか…。もう、帰るのか?」

『ううんまだーっ!』

「そうか」


元気よく告げられる否定の言葉に頬が緩むのが分かる。

いつかは帰ってしまうのだろう。けれどもう少し、今しばらくは共に在りたいと素直に秀吉は思った

end.
きっとこの後めっさ三成に怒られるんだぜ!
[ 20/30 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -