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膝をつき、その甘く色づいた星を一つ摘む。
「金平糖か…。星に似ているな」
『ねー。地上からみた星にもにてるけど、宇宙空間からみた惑星の形態にもそっくりだよ!』
「…そうか」
にこにこと笑いながら、その風貌に見合わない言葉を吐くスピカに少し詰まってしまう。
しかし悲しいかな、どれだけ博識であっても彼女の知識は戦や政には不要なものだった。
スピカが持つ知識は全て、天体に関するものだけで。星の名の由来や生まれ方、流れ星は何故流れるのか等。それ以外は一般常識すら知らない始末。
そんな知識、どう転んでも戦や政には使えなかった。
戦には使えないと判断された。それでも何故スピカが大阪城に居られるのかと言うとまぁ所謂温情と言うやつで。
『みつなりこれいっしょにたべよー』
「無理だ。私にはまだまだやらねばならぬ執務がある。秀吉様の天下の為、休んでいる暇など私には無い」
『ひでよしさますごいね!』
「何だ急に。フン、秀吉様が凄いのは今に始まった事ではない。あの方はこの日の本を掌握す『あのねひでよしさまがね、みつなりははたらきっぱなしでやすみもしないからこれたべてちょっとはやすんどけって!もちろんスピカとね!』
「ひ、秀吉様…!」
『ひでよしさまみつなりのことおみとおしってやつだねーっ』
笑みを崩さないまま懐紙に包まれた金平糖をぎゅっと片手で握り締めると、もう片手で三成の手を握る。
不健康なまでに白いその手は相応しく低い温度で。
スピカの手では三成の指2本を握るのが限界。それでもきゅっと握れば、同じように返してくれた。
『みつなりてぇおっきいねぇ』
「貴様が小さいのだ」
フン、と鼻を鳴らしてゆっくりと三成が歩き出す。一歩が大きくてスピカが追いつけなくなりそうだが、歩調は本当にゆっくりだから縺れる心配もない。
手を繋いで歩く2人の後ろ姿はお世辞にも親子とは呼べないけれど、兄妹と言うには充分だった。
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