「聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

『 ? うん、いいよ! なぁに?』

「ありがとう。じゃあ、まず君の名前を聞かせてもらおうか」

『スピカは乙女座のスピカ!乙女座を飾る一等星っ!』

「(いっとうせい…)」


“おとめざ”や“いっとうせい”が何かは分からないが、とりあえず地名ではなさそうだ。
そんな所聞いたこともないし、このスピカと名乗った幼子の様子からも違うと見て取れる。たかが地名をこんな嬉しそうに言わないだろう。


この不可思議な子の名前と“何か”を新たに知ることが出来た。が、更に疑問が増えた気もする。
これはいっそ直球で聞いてしまったほうがいいのか?


「…貴様は何者だ」

『スピカ…』

「そういう事を聞いているのではないっ!!」

『ぴ…っ!』


望んでいる答えを口にしないスピカと名乗る幼女に苛立ちが募る。子どもだから分からないなんてことはないだろう。

生まれながらに知っているハズだ。人ならばどこの国の何という土地の出身と言うように、人でなければその正体を。


それを求めているのに口にしない。
この様子なら大した警戒もせずにポロリと簡単に吐きそうなものを…。ゆるりと躱されているような気がした。

その余りに苛立ち声を荒げれば可哀想なぐらいに肩を跳ねさせ怯えるスピカ。こういった脅しや怒声に慣れていないようだ。

怯えさせては元も子もない。せっかく話を聞き出せそうだったのにこれではいけない、と半兵衛が三成を窘めた。


「落ち着きたまえ三成くん。それでは逆効果だよ」

「はっ、申し訳ございません…っ」

「彼女はまだよく状況を飲み込めていないみたいだからね。まずはそれを教えなければ」


そうして半兵衛は微笑みを浮かべながら出来るだけ優しい手つきでスピカの頭を撫でてやり、事の経緯を伝える。


最初は怯えていたスピカだが、自分が空から落ちてきた… つまりはここが自分の元居た場所ではないことを知るとみるみるうちに目を見開いて驚く。
そしてその瞳にはたっぷりと涙が膜を張った。

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